北本市史 通史編 近世

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第1章 江戸幕府の成立と北本市域

第4節 検地の実施

4 承応~元禄期の検地

荒井村の寛文検地
慶長から元和にかけての時期(一五九六~一六二四)は、幕府が覇権(はけん)を確立し、年貢確保を第一義とし、河川改修や新田開発を積極的におし進めた時期であり、石戸領における元和検地もその一環であった。しかし、この段階においては、領主の土地把握は、年貢賦課地としての耕地把握が中心であり、周囲の山・雑木林・原野などは直接の対象とならなかった。そのため、耕地開発の著しく進む慶長~寛永期を経ると、農民の関心は次第に周囲へと広がり、その様子は、寛永期以降に顕在化する山論や秣場(まぐさば)論争などとなって現れてくる。また、開発の進展あるいは個々の耕地の生産力の上昇に伴い、当初に設定された高と実際の反別が合致しなくなる。こうした状況下で、その対応として寛永期(一六二四~四四)以降、本田畑の検地とともに新田検地・山検地などが盛んに行われ、総体的な土地把握がなされていくのである。このような耕地開発は、関東全域について見ても、寛文年間(一六六一~七三)に一区切りがついたが、それまでの成果を新たな年貢源とするために、幕府・大名・旗本は一斉に検地を行った。いわゆる「寛文の総検地」がこれである。そして、この時期に村むらの耕地や景観がほぼ確立するのである。市域では、寛文七年(一六六七)には荒井村・下石戸村で、同八年には石戸宿村で地頭牧野氏、北本宿村で伊奈氏による検地が実施されている。高尾村については『新記』にも記述がないが、牧野氏の領地であり、同様に実施されたものと考えられる。これらのうち、寛文七年の荒井村検地について、前述の元和検地(元和六年・ 一六二〇)との比較も交えながら考察してみたい。

図7 字・小名地図

(『北本地名誌』P32より引用)

この検地は、武田忠兵衛・横田権左衛門・瀬尾伊右衛門・山中右衛門の四名を検地役人として、表12のような順序で実施され、四冊の検地帳にまとめられたが、そのうち畑三冊のみが現存し、水田・屋敷地については不明である。村方の案内者の記<もなく、日付はいずれも三月十日となっているが、元和以降の新田開発、起返しなどを確認するために行った「改め検地」にしても、とても一日では不可能であり、この日付は浄書し領主方へ提出した日ではないかと思われる。したがって、元和検地表13のように、日ごとにその足跡をたどることはできないが、図7などと併用することにより、その概要を知ることができる。
表12 足立郡荒井村検地施行順序(字名)(寛文7年)
No日 付 案内者 字 名 
3.10
(畑・460筆)
西番場(9)→むかへ(25)→久保(1)→久保ノまへ(15)→西ばんば(11)→西ノ屋敷(1)→まへ山(2)→かど (7)→東ばんば(4)→東ばんばまへ(5)→東ばんば (9)→寺ノまへ(4)→うしろ大道(8)—ほり之内(11) →高尾ほり之内(1)—ほりノ内(5)—三神(19)→ほり 之内(3)→まへ(1)→うちで(4)→ミやノまへ(22)→ 北原(1)→うちで(7)→匕原(11)→うちで(3)→北原 (6)→うちで(4)一西ノわき(1)→うちで(5)→□□□( 3)→北原(1)→せと(1)→まへ(2)→北原(2)→ うちで(6)→なしの木谷(9)→いかつち前(1)→市場 いなりのまへ(4)→小山(8)→いかつち前(17)→せとへ(21)→高尾せとへ(10)→せとへ(1)→まく下(9)→ 太郎次久保(7)→うちで(2)→市場いなりのまへ(3) →なしの木谷(4)→うちで(2)→市場(2) →うちで(2)→乃ゝミや(10)→こさ山(2)→乃ゝミや(8)→祢から見(1)→天神前(2)→市場(47)→ふかいのまへ(6)→いり(2)→やい塚(22)→南の前(3)→まへ(1)→志ゃうぢんは(4)→西久保(9)→西原(21)
3.10
(畑・346筆)
氷川下(5)→天神前(5)→天神ノ下(5)→八まんノ前(5)→大ろくてん前(1)→くわ蔵(10)→屋通り(4)→大ろくてん前(11)かど(6)→うちて(4)→かど(2)→らんどう(12)→らんとうまへ(1)→ なミ木(1)→ らんとう(4)→神明わき(1)→みゃうわう(4)→たう免き(2)→うしろ(45)一谷津(2)→上ノヤシキ(2)→谷津(1)→うしろ(5)→わき(1)→和田(6)→欄□(1)→かう免き(3)→谷津(2)→かう免き(11)→向原(1)→水口方(12)→善蔵塚(3)→むかへ原(2)→熊の免ん(1)→むかへ原(1)→熊の免ん(3)→むかへ原(11)→うちで(11)→とうかの前(3)→いなりのまへ(2)→あたこのわき(8)→あたこのまへ(2)→むかへ原(2)→熊の免ん(8)→鉄砲町(17)→うちで(4)→鉄砲町(28)→はんさいけ(5)→小原(6)→志まかへと(2)→小原(7)→やだり(24)→やだり(15)→□□□壱丁免(3)→宮ノ前(2)→や通り(1)
3.10
(畑・473筆)
西原(8)→西浦(7)一久保之後(5)→たうか谷(9)→ 笠原(21)→廣谷(13)→いかつち前(5)→六道(22)→塚越(19)→大六天(1)→九丁(23)→かと(1)→うちで(4) →前(2)→おいけ(1)→うちて(1)→山下(2)→おいけ(4)→九丁( 6)→六道(7)→塚越(2)→六道(29)→うちて(5)→束原(12)→うちて(6)→東原(17)→うちて(2)一花見堂(20)→うちて(1)→道六神(4)→さぐち(11)→道六神(1)→月夜海道(4)→さぐち(10)→道六神(10)→めほそ(16)→定使山きわ(1)→めほそ(2)一地蔵堂脇(3)山こし(11)→大蔵わん(15)→稲荷山越(8)一大蔵わん(11)→屋だり(8)→大蔵わん(4)→やたり(18)→北原(11)→屋だり(36)→普門寺久保(1)→川田谷久保(5)→九丁( 5)→九条(4)→外東(1)→外西(1)→外東(2)→たうか新田(2)→南前(5)→うちで(5)→やたり(2)→せとへ(1)→のゝミや(1)→やたり(1)→南谷(1)→いり(1)→やたり(1)→南谷(1)→すわノ入り(4)
資料欠 

注1 屋敷・水田については、資料を欠き不詳

 2 表中の括弧つき数字は、筆数をあらわす(『市史近世』№68~73より作成)


表13 足立郡荒井村検地案内人と施行順序(字名)(元和6年)
No 日 付 案内者 字 名 
8.10
(田・130筆)  
雅楽助
理右衛門 
□□□□(10)→あらいくほ(3)→天神前(8)→すわまい(5)→下たり(34)→いり(6)→うは坂(26)→石はし(5)→やたり(1)→うわ坂(1)→やたり(9)→やまの下(1)→宮の前(5)→小谷(16)
8.11
(畑・145筆)  
雅楽助
理右衛門 
さくち(30)→かわたくほ(4)→たいたくほ(4)→をいけくほ(1)→やいっか(1)→北原(2)→野々宮(22)→市場前(4)→セとい(12)→いかつち(12)→かへかいと(12)→いかつち(10)→ くほまへ(16)→西馬場(10)→にしはら(4)→市場前前後(1)
8.12
(畑・167筆)  
雅楽助
理右衛門 
ばん口前(101はらのまへ(13)→内かいと(4)→北原(3)→宮の前(24)→三神(14)→ほりの内(13)→大蔵安(2)→やたり(34)→堀の内(23)→やいつか(12)→にしのくぼ(10)→はらのまへ(5)
8.13
(屋敷・43筆)  
雅楽助
理右衛門 
記載なし(23)→北袋(11)→鉄砲宿(9) 
8.14
(畑・189筆)  
雅楽助
理右衛門 
宮の西(12)→ぐわぞう(5)→大六天(13)→□□□くほ(3)→せとい(1)→かさ原(26)→若宮(6)→がうめき(21)→うしろ(15)→明王ほり田共(8)→山神(6)→わた(5)→あたこわき(19)→玉泉塚(4)→やたり(22)→半在家(15)→しまかいと(1)→北袋(1)→鉄砲宿ま□( 6)

注 表中の括弧つき数字は、筆数をあらわす(『市史近世』№68~73より作成)



この検地の結果を、字別・等級別に集計したものが表14であり、その合計について、元和検地の段階と比較したものが表15である。この中で、「居所」(№103)として二三筆・一町六反五畝二六歩が記載されているが、これは屋敷地の一部が畑として高入れされたものか、あるいは屋敷回りに開かれた切添新田と思われる。
表14 荒川村字別・等級別集計表(畑)(寛文7年)   (単位:畝)
No字 名 上々(筆数) 上(筆数) 中(筆数) 下(筆数) 下々(筆数) 合計(筆数) 
あたこのまへ 11.16( 2) 11.16 ( 2) 
あたこのわき 31.27( 7) 3.29(1) 35.26 ( 8) 
いかつち前 97.22(15) 39. 2( 8) 136.24 (23) 
市 場 195. 6(26) 129. 2(23) 324. 8 (49) 
市楊いなりのまへ 61.21(7) 61.21(7) 
いなりの前 5.13( 2) 5.13 ( 2) 
稲荷山越 37. 7( 6) 13.10( 2) 50.17 ( 8) 
い り 5. 0(1) 9.27(1) 11.2(1) 25.29 ( 3) 
う し ろ 18. 7( 2) 5.17( 1) 31.21(4) 131.17(31) 35. 4(12) 222. 6 (50) 
10 うしろ大道 29.12( 3) 17.10( 2) 25.19( 2) 6. 9(1) 78.20 ( 8) 
11 う ち で 9. 3( 2) 8. 0(1) 25. 8( 4) 286.10(48) 101.21(19) 430.12 (74) 
12 お い け 20. 2( 4) 5.19(1) 25.21(5) 
13 かうめき 41.19( 6) 6.16( 2) 7.11(3) .12(1) 1.18(1) 57.16 (13) 
14 笠 原 21.16( 2) 19. 2( 2) 108.18(12) 24. 7( 5) 173.13 (21) 
15 か ど 26.11(4) 38. 0( 3) 24. 8( 4) 21.12( 4) 1.14(1) 111.15 (16) 
16 上ノヤシキ 4. 0(1) 3. 4(1) 7. 4 ( 2) 
17 川田谷久保 28.20( 3) 9.24(1) 4.29(1) 43.13 ( 5) 
18 北 原 105.18(15) 38.21(6) 144. 9 (21) 
19 九 丁 103. 0(16) 130.15(17) 233.15 (33) 
20 九 条 40.28( 4) 40.28 ( 4) 
21 久 保 3.17(1) 3.17 (1) 
22 久保 ノ後 10. 4(1) 31.29( 4) 42. 3 ( 5) 
23 久保まへ 38.21(9) 24.1(4) 14.29(1) 3. 3(1) 80.24 (15) 
24 熊の免ん 43.1(6) 26.27( 6) 69.28 (12) 
25 くわそう 6.13(1) 42.14( 7) 4.27( 2) 53.24 (10) 
26 こさう山 10. 7( 2) 10. 7 ( 2) 
27 小 原 94.20(12) 3.16(1) 98. 6 (13) 
28 小 山 34.18( 7) 5.10(1) 39.28 ( 8) 
29 さ ぐ ち 38.14( 5) 17.26( 6) 52. 7(10) 108.17 (21) 
30 三 神 6.22(1) 22. 4( 4) 69.17(11) 8.21(3) 107. 4 (19) 
31 地蔵堂脇 2〇. 7( 2) 5.26(1) 26. 3 ( 3) 
32 志まかへと 20.18( 2) 20.18 ( 2) 
33 志やうちんは 4. 7(1) 8. 0( 3) 12. 7 ( 4) 
34 定使山きわ 7.17(1) 7.17 (1) 
35 神明わき 4.10(1) 4.10 (1) 
36 すわノ入 34.10( 4) 34.10 ( 4) 
37 せ と 9.19(1) 9.19 (1) 
38 せ と へ 1.0(1) 24.20( 9) 49.10(13) 75. 〇 (23) 
39 高尾せとへ 36.13( 6) 16.1(4) 52.14 (10) 
40 善 蔵 塚 21.13( 3) 21.13 ( 3) 
41 外 東19. 3( 3) 19. 3 ( 3) 
42 外 西5.17(1) 5.17 (1) 
43 大蔵わん 130.28(21) 38.25( 9) 169.23 (30) 
44 大 六 天 6.27(1) 6.27 (1) 
45 大六天前 28.10( 4) 13.17( 3) 5.27(1) 11.13( 2) 3.24( 2) 63. 1 (12) 
46 太郎次久保 10.17( 3) 3.12( 2) 13.29 ( 5) 
47 塚 越6.14(1) 54.17( 9) 76.18(11) 137.19 (21) 
48 月夜海道 39.18( 4) 39.18 ( 4) 
49 鉄 砲 町 108.14(17) 153.24(25) 262. 8 (42) 
50 寺ノまへ 23. 3( 2) 21.28( 2) 45.1(4) 
51 天 神 前 9. 5( 2) 25.11(5) 34.16 ( 7) 
52 天神ノ下 23. 4( 3) 9.28( 2) 33. 2 ( 5) 
53 たうか新田 6.20( 2) 6.20 ( 2) 
54 とうかの前 13. 6( 2) 6.13(1) 19.19 ( 3) 
55 たうか谷 4. 7(1) 5.15(1) 11.8( 3) 13.22( 4) 34.22 ( 9) 
56 たうめ巻 16.28( 2) 16.28 ( 2) 
57 道 六 神 54. 9(10) 18.11(5) 70.20 (15) 
58 なしの木谷 39.17( 5) 26. 8( 2) 12.15( 4) 10.23( 2) 89. 3 (13) 
59 な ミ き 9.1(1) 9.1(1) 
60 西 浦68.16( 6) 12. 2(1) 80.18 ( 7) 
61 西 久 保 48.13( 9) 48.13 ( 9) 
62 西ノわき 3.11(1) 3.11(1) 
63 西 原102.25(21) 38.18( 8) 141.13 (29) 
64 西 番 場 58.14( 6) 67. 6( 7) 37.20( 5) 11.23( 2) 175. 3 (20) 
65 祢から見 6.17(1) 6.17 (1) 
66 ののみや 3.15(1) 39. 9( 7) 42.12( 8) .20(1) 8. 2( 2) 93.28 (19) 
67 八幡ノ前 3.28(1) 7.10(1) 10.24( 3) 22. 2 ( 5) 
68 花 見 堂 64.23(11) 3〇. 7( 8) 95. 〇 (19) 
69 半 在 家 18.17( 4) 5.19(1) 24. 6 ( 5) 
70 東 原123. 0(22) 13.24( 5) 136.24 (27) 
71 東ばんば 63.18( 7) 45.13( 5) 13. 4(1) 122. 5 (13) 
72 東ばんばまへ 6.11(1) 46. 2( 4) 52.13 ( 5) 
73 氷 川 下 23.16( 3) 5.17(1) 1.27(1) 31.0 ( 5) 
74 広 谷8.29( 2) 53.20( 8) 17.22( 3) 80.11(13) 
75 ふかいのまへ 5.18( 2) 12.17( 4) 18. 5 ( 6) 
76 普門寺久保 6.22(1) 6.22 (1) 
77 堀 の 内 30.21(2) 62.1(5) 26.12( 5) 22. 9( 4) 10. 6( 2) 151.19 (18) 
78 髙尾ほり之内 9.11(1) 9.11(1) 
79 ま へ6.22(1) 7.22( 3) 6.11(1) 20.25 ( 5) 
80 ま へ 山 19. 5( 2) 19. 5 ( 2) 
31 ま く 下 12. 8( 8) 2. 7(1) 14.15 ( 9) 
82 水 口 方 6.18(1) 49.22( 9) 9. 7( 2) 65.17 (12) 
83 南 谷10.12( 2) 10.12 ( 2) 
84 南 前7.25(1) 4.13(1) 12. 4( 2) 24.12 ( 4) 
85 宮 ノ 前 17.16( 2) 33.22( 4) 113.24(16) 9.12( 2) 174.14 (24) 
86 みゃうわう 27.18( 4) 27.18 ( 4) 
87 む か へ 10.26(1) 15.10( 2) 83.26(15) 35.20( 6) 145.22 (24) 
88 向 原 59. 5(15) 6. 3( 2) 65. 8 (17) 
89 め ほ そ 6. 5(1) 48. 2( 8) 36. 2( 8) 1.23(1) 92. 2 (18) 
90 や い 塚 13.11(2) 12.24( 3) 74.21(16) 3.13(1) 104. 9 (22) 
91 や た り 11.20( 4) 239. 5(27) 315.11(40) 161.24(27) 48.29( 7) 776.29(105) 
92 や 口 り 5. 2(1) 7. 5( 2) 2. 9( 2) 14.16 ( 5) 
93 谷 津 10.24( 2) 6.17( 3) 17.11(5) 
94 山 こ し 51.24( 7) 17.25( 4) 69.19 (11) 
95 山 下 16. 2( 2) 16. 2 ( 2) 
96 らんとう 5.26(1) 27.23( 3) 34. 4(10) 5.11(2) 73. 4 (16) 
97 蘭□□ 3. 6( 1) 3. 6 (1) 
98 らんとうまへ 4.15(1) 4.15 (1) 
99 六 道 118.15(21) 179. 0(37) 277.15 (58) 
100 わ た 18. 3( 4) 10.18( 3) 28.21(7) 
101 22.26( 3) 22.26 ( 3) 
102 28. 7( 3) 28. 7 ( 3) 
103 居 所 9. 6( 2) 13.28( 2) 102.21(15) 40.1(4) 165.26 (23) 
合計386.21(57)  793.23(101)  1094.12(152)  3858. 6(658)  1627. 7(311)  7760. 9(1279)  

注 表中のA・Bは虫損 (武州足立郡新井村御検地帳より作成)


表15 荒井村高反別構成表

(単位:畝)

地目等級 元和6年(1620) 寛文7年(1667) 比 較 
反 別 筆数(筆)  反 別 筆数(筆)  反 別 筆数(筆)  
上々畑 261.13
(6.9%)  
37 386.70
(5.0%)  
57 + 125.57 + 20 
上 畑 730.77
(19.4%)  
81 793.77
(10.2%)  
101 +63.0+ 20 
中 畑 918.97
(24.4%)  
112 1094.40
(14.1%)  
152 + 175.43 + 40 
下 畑 1759.97
(46.7%)  
253 3858.20
(49.7%) 
658 + 2098.23 + 405 
下々畑 95.37
(2.5%)  
18 1627.23
(21.0%)  
311 + 1531.87 + 293 
合 計 3766.21
(100.0%)  
501 7760.30
(100.0%)  
"1279 "+ 3994.10 + 778 

(『市史近世』№68~72・寛文7年検地帳より作成)

さて、この結果をみると総反別で三七町六反六畝六歩から七七町六反九歩へと、この約五〇年の間に二倍以上に激増していることがわかる。この数字は幕末の状況を示す『郡村誌』に記載されている畑八八町九畝二二歩の九〇パーセント弱にあたり、荒井村においては、この時期までに急速な開発、さらには年貢増徴のための無高地の高入れが行われたことを示している。さらに、筆数においても五〇一筆から一二七九筆へと実に二・六倍にも増加している。その内訳を見ると、下畑と下々畑に集中しており、下畑が四〇五筆・二〇町九反八畝七歩、下々畑が二九三筆・一五町三反一畝二六歩の増加を示し、両方を合わせると六九八筆・三六町三反三歩となり、全増加分の筆数で八九・七パーセント、面積では九〇・九パーセントを占めている。一方、上々畑も二〇筆・ 一町二反五畝一七歩の増加となっているが、そのうち一六筆・八反八畝一五歩は「高田畑成」によるものである。これは、それまで「水田」だったものを、何らかの理由により「畑」に地目変更したものであり、等級はすべて上々畑として高入れされている。
次に表14をもとに字別にみていくと、最も耕地(畑)面積の多いのが「谷足」(№91)で、全体の一割にあたる七町七反六畝二九歩(一〇五筆)を占めている。次いで第二位は「うちで」 (№11)の四町三反一二歩(七四筆)、第三位は「市場」(№4)の三町二反四畝八歩(四九筆)、第四位は「六道」(№99)の二町七反七畝一五歩(五八筆)、第五位は「鉄砲町」(№49)の二町六反二畝八歩(四二筆)で、以下「九丁」(№19)、「うしろ」(№9)、「西番場」(№64)、「宮ノ前」(№85)、「笠原」(№14)の順となっている。少ない方では、「久保」(№21)、「神明わき」 (№35)、「らんとうまへ」(№98)などのように、一反歩にも満たない所が一六か所もある。これを、元和検地(表16)段階でみると、第一位はやはり「谷足」 (№36)の五町七反六畝二三歩(五六筆)で、この間に四九筆・二町歩余の増加をみている。第二位は「堀の内」(№31)の三町三反二七歩(三六筆)、第三位は「宮の前」(№33)の二町二反九畝四歩(二四筆)、第四位は、「かさ原」(№8)の一町八反一畝一九歩(二六筆)、第五位は「さくち」(№16)の一町七反三畝三歩(三〇筆)で、以下「はらのまへ」(№28)、「かへかいと」(№9)、「あたこわき」(№1)、「せとい」(№19)、「ばんは前」(№30)の順となっている。しかし、一町歩以上の畑を持つ地域(字)は一四か所あるものの、二町歩以上は三か所のみで、逆に「をいけくほ」(№6)や「北袋」(№12)のように一畝、二畝というような所もあり、全体的にみて開発途上という状況が窺(うかが)える。このうち、「谷足」を除き、前述二位から一〇位までのすべての地域(字)において耕地面積が減少している。中でも、「はらのまへ」、「かへかいと」については、寛文検地帳にその名がみえず、「ばんは前」についても似たような地名はあるが同一名は見当たらない。「堀の内」を例にとると、三町三反二七歩(三六筆)から一町五反一畝一九歩(一八筆)へと半分以下に減少している。しかし、これは耕地そのものの減少ではなく、字数が三九から一〇三へと増加していることからもわかるように、その中に含まれていた小名が独立して表記されるようになったための見かけ上の減少(=分散・細分化)と考えられる。これは、今後地名の掘りおこしと、場所の比定が可能となれば、ある程度は解明できると思う。
表16 荒井村字別・等級別集計表(畑)(元和6年)

(単位:畝歩)

No 字 名 上々(筆数)  上(筆数) 中(筆数) 下(筆数) 下々(筆数) 合計(筆数) 
あたこわき 133.29(19) 133.29(19) 
いかつち 36. 7( 5) 14.28(1) 50.22( 6) 101.27(12) 
市場前 39.12( 4) 39.12( 4) 
うしろ 93.14(15) 93.14(15) 
内かいと 35.20( 4) 35.20( 4) 
をいけくほ 1.10(1) 1.10(1) 
がうめき 24. 5( 4) 14.13( 3) 33.10( 7) 30.25( 7) 102.23(21) 
かさ原 21.25( 3) 17.1(3) 43.19( 5) 97.16(14) 1.18(1) 181.19(26) 
かへかいと 34. 2( 4) 108. 3(15) 23.19( 3) 165.24(22) 
10 かわたくほ 39.17( 3) 9.18(1) 49. 5( 4) 
11 北 族 47. 3( 4) 47. 3( 4) 
12 北 袋 2.13(1) 2.13(1) 
13 玉泉塚 34.16( 4) 34.16( 4) 
14 ぐわぞう 6.11(1) 26. 7( 4) 32.18( 5) 
15 くほまえ 34.16( 9) 10.12( 2) 11.0(1) 15. 2( 4) 71.0(16) 
16 さくち 4.24(1) 69. 9( 9) 75.14(14) 23.16( 6) 173. 3(30) 
17 三 神 39. 5( 9) 77. 6(11) 116.11(20) 
18 しまかいと 18.11(1) 18.11(1) 
19 せとい 111.26(10) 18.1(3) 129.27(13) 
20 大蔵安 8. 7(1) 14.15(1) 22.22( 2) 
21 たいたくほ 12.22( 4) 12.22( 4) 
22 大六天 36. 0( 5) 10. 4(1) 6.12(1) 23.21(5) 1.20(1) 77.27(13) 
23 鉄砲宿ま口 42.14( 6) 42.14( 6) 
24 にしのくほ 7.11(1) 5.10( 2) 44.16( 7) 57. 7(10) 
25 にしはら 46.16( 5) 46.16( 5) 
26 西馬場 44.28( 5) 18.21(1) 26. 7( 3) 7.28(1) 97.24(10) 
27 野々宮 33.13( 6) 34.14( 9) 19. 5( 7) 87. 2(22) 
28 はらのまえ 33.21(3) 76. 7( 7) 61.15( 8) 171.13(18) 
29 半在家 23.29( 5) 5.20(1) 75.13( 9) 105. 2(15) 
30 ばんは前 71.25( 6) 34. 8( 4) 6. 2(1) 112. 5(11) 
31 堀の内 86.20( 9) 170.14(15) 64. 6(10) 9.17( 2) 330.27(36) 
32 宮の西 50.23( 7) 20.23( 3) 15.20( 2) 87. 6(12) 
33 宮の前 9. 0(1) 29.13( 4) 184.11(17) 6.10( 2) 229. 4(24) 
34 明 王 12.10(1) 39. 0( 7) 51.10( 8) 
35 やいつか 1.25(1) 53.18(12) 55.13(13) 
36 やたり 224.13(18) 282.13(24) 69.27(14) 576.23(56) 
37 若 宮 13. 0( 2) 11.1(3) 9. 4(1) 33. 5( 6) 
38 わ た 15.11(3) 3.25( 2) 19. 6( 5) 
39 □□□く ほ 19.13( 3) 19.13( 3) 

(『市史近世』№68~72より作成)


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