北本市史 通史編 近代

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第3章 第一次大戦後の新展開

第1節 地方自治制の再編成

1 地方改良運動から民力涵養運動へ

中丸村宮内五戸組合矯風会
こうした内務行政の意をうけて、本県下にも自治会・戸主会・矯風(きょうふう)会・改良会等さまざまな名称の民力涵養団体が結成されたが、ここでは中丸村大字宮内五戸組合矯風会の場合を紹介しよう。
同申合規約によれば、中丸村大字宮内に矯風会が発足したのは大正十一年(一九二二)四月一日であり、「五戸ヲ以テ一組」(第二条)としたいわゆる五人組制度によっており、一見して同九年の内務省の実行要目に従っていることが知られる。また、先に述べた大正七年十二月の県告諭及び県訓令の趣旨に立脚(りっきゃく)して作成されている。

写真95 中丸村宮内五戸組合矯風会申合規約

(長島末吉家 1)

この「申合規約」によれば、「本組合ハ相互緝睦(しゅうぼく)ヲ旨トシ隣保(りんぽ)相扶(たす)ケ共同一致専(もっぱ)ラ風紀ノ改善ヲ期スルヲ目的」とし、この目的を達成するために、五つの事項を励行することとした。その第一項は風俗・修養であって、①服装は男女とも原則として綿布(めんぷ)を着用すること、②青年の夜遊びを禁止し、実業補習学校または夜学校で知識を啓発すること、③撃剣・柔道・徒歩運動等を奨励して心身の鍛練(たんれん)を図ること、をその内容とした。第二項は勧業・貯金であって、①個人・国家の利益と認める事業は、共同一致団結して奮励すること、②常に質素を旨(むね)として節約を守り、一朝有事の際の救済資金に充(あ)てるため、一戸毎月一〇銭以上を信用組合に貯金すること、を定めている。第三項は休業日並びに労働時間及び集会についてであって、①労働は日の出前に食事を終えて就業し、日没後業務を終る。夜間の業務は午後九時までとすること、②いずれの会にも指定時間の五分前に必ず来場すること、③休業日(略)、等を定めた。第四項は納税(期限内に完納すること)、第五項は冠婚・葬祭・その他であって、そこには一二の例が示されている。冠婚葬祭の費用を節約することは、時間の励行とともに風俗改善申合わせ事項の二大要件であるから、やや繁雑(はんざつ)になるがそれぞれの内容を掲げて宮内五戸組合矯風会の活動の一端を窺うことにしたい。
  一例 組合一般
一、儀式ノ際ハ徳義ヲ重(おもん)シ時間ヲ確守スルコト
二、来会者ハ親戚(しんせき)並ニ組員ヲ以テスルコト
三、儀式ニ支出スル費用ハ各自ノ身分ニ応シ勉メテ冗費(じょうひ)ヲ節スルコト
四、儀式ニヨリ節約シタル剰余金ハ一部ヲ組合ニ寄附シ一部ハ各自ノ貯金ニ充ツルコト
五、寄附金ハ台帳ヲ作成シ組合長受入ヲナシ中丸信用組合ニ預金シ必要ノトキハ組合員三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ之ヲ公共事業ニ支出スルコト
但シ組合長ノ交代卜同時ニ関係書類ヲ后任(ママ)者ニ引継スルコト
  二例 婚儀
一、饗応(きょうおう)ハ新客ノ外質素ヲ旨トシ親戚立会人卜虽(いえど)モ酒ハ三献(さんこん)以内トナスコト
二、衣服並ニ器具其他ノ調度ハ勉メテ華美ヲ節シ身分相応ニスルコト
三、儀式席上ノ外ハ時間ヲ節約スルコト
四、引物・配物(くばりもの)ハ一切廃止スルコト
五、新郎・新婦ノ披露ハ席上ニ於テナシ親戚立会人ニ止(とど)ムルコト
六、婚姻后近親又ハ朋友其他卜虽(いえど)モ新郎新婦ノ招待ハ絶体(ママ)ニ之ヲ廃止スルコト
七、婚姻届ハ式後直チニ実行スルコト
  三例 葬式
一、葬式ニアタリ施主ハ組員卜相談ノ上参列人員及賄(まかない)ノ程度並ニ役割ヲ定ム 但シ必要已(やむ)ヲ得サル場合隣組ノ援助ヲ求ムルコトヲ得(略)
二、僧侶ハナル可ク少数ニナスコト
三、膳部(ぜんぶ)ハ一汁五菜トシ酒ハ出サ﹅ルコト
四、香典(こうでん)ハ親戚及五戸組ノ外廓(かく)限り之ヲ廃止スルコト
五、組合共有トシテ輿(こし)ヲ設備スルコト
六、造花・生花・放鳥等ノ贈答並ニ引物配物撤戔(ママ)ヲ廃シ勝手念仏ヲ行ヒ茶ノ子ハ一戸六個以内トシ尚忌中祓(きちゅうはらい)ニハ若干(じゃっかん)ノ酒ヲ出スハ随意(ずいい)ノコト
七、葬式ハ総テ一日ニ執行スルコト 但シ忌中祓ハ不止得(やむをえざる)場合翌日執行スルコトヲ得
  四例 生産宮詣紐解
一、出産祝ノ贈答ハ親戚及五戸組ノ外之ヲ廃シ而(しこう)シテ親戚卜虽(いえど)モ長男長女ニ限ルコト
二、出産児ノ祝賀トシテ金品ヲ受ケタルトキハ之ヲ其子ノ教育資金ニ貯蓄スルコト 但シ事情ニ依り其限リニアラズ
  五例 祭礼
一、仏事ニ付忌日(きじつ)並ニ年回ハ親戚五戸組ノ外招待又ハ贈答ヲナサス引物ハ一切廃止スルコト 但シ膳(ぜん)部ハ一人金五十銭以内トシ酒ハ随意トス
二、盂蘭盆(うらぼん)、彼岸会(ひがんえ)ニ付テハ親戚並ニ五戸組ノ外ハ金品ノ贈答ヲナサス、新盆供養ノ引物ハ一切廃止スルコト但シ五戸組ハ新盆ニ限り贈答金額ハ金弐拾銭以内トス
  六例 節句
一、節句ノ贈答ハ親戚及五戸組ノ外之ヲナサヾルコト
二、節句ノ鯉幟(こいのぼり)、旗、雛、弓羽魔(ゆみはま)、羽子板、其他ノ贈答ヲ廃シ実用品ニ換へ或ハ子女ノ育英ノ資ニ充(あ)ツルタメ金品ヲ贈ルコト
(以下、七例入営・除隊、八例普請(ふしん)並ニ上棟式、九例年末・年始、十例諸参詣(さんけい)並ニ旅行、十一例講ノ開催、十二例家畜・家禽(かきん)は略す)

(長島末吉家 一)


この宮内五戸組合矯風(きょうふう)会には役員として組合長、副組合長各一名、伍長一三名がおかれ、規約の励行に努めさせた。その選出は組合長・副組合長については組合会、伍長は五戸組の互選により、その任期は三か年であった。組合会に要する費用は、組合員の均等負担とした。なお、本規約を確実に遵守(じゅんしゅ)するため、各自署名捺印させた。初代組合長には黒澤孫八、副組合長には渡辺茂八が就任した。
 中丸村宮内に五戸組合矯風会が発足した大正十一年(一九二二)の春ごろは、我が国の経済界は再び不況に見舞われていた。そこで内務省は民力涵養運動を一層強化するとともに、同年秋には消費節約と勤倹貯蓄運動を全国的規模で展開することとなった。本県は素早くこれに対応し、同年九月十二日、生活改善申合規約準則案(『県史通史編六』P三四八)を公布した。そして同十三年十一月には「勤倹週間」が設定され、大震災の復興を含めて、生活改善運動が推進された。石戸・中丸両村のこの運動の実態は、残念ながら明らかではない。

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