北本市史 通史編 近代
第4章 十五年戦争下の村とくらし
第2節 食糧増産と経済の統制
2 産業組合から農業会へ
北本宿村農業会の設立昭和十九年一月二十一日、第一回北本宿村農業会設立委員会が北本宿村役場で開催された。
当日の議事は、下記の通り、実に多岐にわたっていた(長島元重家 五十七)。
北本宿村農業会設立委員会議事日程
一月二十一日第一回設立委員会(午後一時於北本宿村役場)
一、地方事務所長挨拶
二、設立委員長ニニ関スル件
三、設立委員会規則ニ関スル件
四、設立事務所設置ニ関スル件
五、会則ニ関スル件
六、出資引当案ニ関スル件
七、昭和十八年度内ニ於ケル借入額最高限度ニ関スル件
八、昭和十八年度内ニ於ケル一会員ニ対スル貸付額ノ最高限度ニ関スル件
九、昭和十八年度北本宿村農業会ノ賦課金ノ賦課徴収方法ニ関スル件
十、北本宿村農業会ノ負担ニ帰スベキ創立費及其ノ償却方法ニ関スル件
十一、受命法人財産目録貸借対照表ノ検査確認ニ関スル件
十二、事業収支計画ニ関スル件
十三、設立総会開催ノ日時・場所ニ関スル件
十四、会長・副会長・理事ノ推薦ニ関スル件
十五、監事ノ選任ニ関スル件
十六、信用評定員ノ選任ニ関スル件
十七、総代選任ニ関スル件
十八、其ノ他
一月二十一日第一回設立委員会(午後一時於北本宿村役場)
一、地方事務所長挨拶
二、設立委員長ニニ関スル件
三、設立委員会規則ニ関スル件
四、設立事務所設置ニ関スル件
五、会則ニ関スル件
六、出資引当案ニ関スル件
七、昭和十八年度内ニ於ケル借入額最高限度ニ関スル件
八、昭和十八年度内ニ於ケル一会員ニ対スル貸付額ノ最高限度ニ関スル件
九、昭和十八年度北本宿村農業会ノ賦課金ノ賦課徴収方法ニ関スル件
十、北本宿村農業会ノ負担ニ帰スベキ創立費及其ノ償却方法ニ関スル件
十一、受命法人財産目録貸借対照表ノ検査確認ニ関スル件
十二、事業収支計画ニ関スル件
十三、設立総会開催ノ日時・場所ニ関スル件
十四、会長・副会長・理事ノ推薦ニ関スル件
十五、監事ノ選任ニ関スル件
十六、信用評定員ノ選任ニ関スル件
十七、総代選任ニ関スル件
十八、其ノ他
昭和十八年二月十一日に石戸村と中丸村は合併して、行政上では北本宿村となっていたが、農業会が設立されるままでは、農会及び産業組合レベルでの両村の統一はなされていなかった。翌十九年にいたって三月十三日に、石戸村と中丸村の農会及び信用販売購買利用組合が合併され、北本宿村農業会が設立された。
北本宿村農業会の業務内容は、昭和二十年度北本宿村農業会事業収支計画(近代No.一六二)により窺(うかが)い知ることができる。この収支計画を見ると、戦争末期において、農業会が食糧増産や戦時物資の生産等の指導、戦時下の農村の生活の整備等の事業を通じて、戦時体制の一翼を担っていたことがわかる。すなわち北本宿村農業会は、農業に関する国策に即応し、上級団体の指導によって、事業を完遂することを目的としていた。
農業の指導・奨励・発達に関する事項として、食料農産物の増産、蚕繭(さんけん)確保、畜産奨励、副業生産物の増産と生産資材確保の五つをあげ、その重要性を示していた。農民精神を高揚させることや経営の改善・生産技術の高度化・耕地の整備等に関して、農業会がその指導を徹底することにより、食糧増産を確保し、供出の完遂がはかられるとした。また、戦時下での繭繊維の重要性に鑑(かんが)み、需要に適合する長繊維の合理的配分と増産につとめ、産繭(さんけん)供給額の目標確保を企図した。さらに、自給肥料の増産と農村労働力の補給のため、有畜農業の普及を徹底させ、飼料の自給や畜産増殖等に関する適切な施設をつくることも計画した。
副業生産物の増産に関しては、戦時物資の包装資材である藁工品の増産を進めるため、増産報国運動の実施割当や合理化集荷配給機構の整備に必要な施設をつくることを計画した。また、ため池・湖沼・水田等の完全利用につとめ、淡水魚の増産をはかり、農村栄養の維持増進をはかろうとした。
農業労働力や資材の不足に対するために、二つの応急措置がとられた。一つは労力・畜力の活用と共同作業等をより徹底することであり、もう一つは農機具に対しての活用・共同管理・その他使用の合理化をはかることであった。
農業の統制に関する事項として、農業会は、農業会の統制と農業生産統制令による統制の両面を活用し、総合生産計画の徹底をはかった。
具体的には、農業に従事する者の福利増進に関しては、農村保健施設の整備や共同炊事や共同託児所の普及等に必要な施設をつくることとした。信用事業は、農業増産や自作農資金の貸出をするとともに、貯蓄の増強につとめることを計画し、販売事業は、食料その他重要農作物の集荷や供出に関して、関係機関と密接に連携(れんけい)し、供出を完遂することを目標にした。購買事業は、農業生産用資材や農村生活必需物資等の必要量の確保につとめ、適正な配給に努力し、利用事業は、設備の利用に関して、実情を考察し、適当な事業を実施するものとした。