北本市史 資料編 自然

全般 >> 北本市史 >> 資料編 >> 自然

第4章 北本の気候

第4節 天気俚諺

天気に関する俚諺(ことわざ)は北本市に在住する古老から、アンケートの形式で収集した。御協力いただいた方は、四十六歳から九十一歳までの一八四名で、いずれも北本市に生まれたか、長く在住されている方である。採用した俚諺は「その他」を除いて計一一七一例に及ぶ。ただし、他の地域の俚諺は除いた。重複するものや内容が矛盾するものもあったが、できるだけ原文を生かす言いまわしを尊重した。俚諺の内容についての解説は省略し、分野別に分類するにとどめた。表現と分類上の基準を以下に記す。
一、一部言い方が違うものや同じ内容を別の表現をするものは- -で示す。
二、内容の説明は()で示した。
三、分類は以下のような手順で行った。その土地の地域名のあるもの、地震に関するもの、農業に関するもの、動植物に関するものをそれぞれ分類した。重複する場合(例えば農業と植物)は、前掲のものを優先とした。それ以外で日常生活に関するものを分け、残りは「その他の短期予報」とした。これ以外で、年間を通じた予報などは、「四季ないし長期予報」として別分類した。
俚諺というよりも、旧習やできごとの記述も多くあったが、そのうち主なものを「その他」の欄に記した。
一、その土地の地域名のある天気俚諺、五八例
二、動物・植物に関する天気俚諺、三二〇例
三、農業に関する天気俚諺、七四例
四、日常生活に関する天気俚諺、一三二例
五、その他の短期予報、四五二例
六、四季ないしは長期予報、一一二例
七、地震に関する俚諺、二三例
八、その他

一、「その土地の地域名のある天気俚諺」五八例
富士先三束。一七例
(富士山に入道雲がかかると麦束を三束たばねるうちに雷雲がくる)
富士が雲傘をかぶると風がふく。三例
-富士山に雲がかかると風が吹く-
富士の空鳴り雨降らず。一例
富士オロシは大雨だ。一例
虹が富士にかかると大雨になる。一例
富士がくっきり見えれば天気が続く。一例
西の山(秩父連山)が見えればお天気はよくなる。一〇例
-西山が見えないと翌日の天気は悪くなる-
秩父の山に雲がかかると翌日は風が吹く。二例
秩父方面から出る雷雲は「麦束三束」といって早く来る。一例
秩父の方に雲がどんどん行く時は荒川大洪水。三例
-台風の時丑寅風が強いと荒川はたいてい洪水-
浅間山に朝雲がかかっていると北風が出る。二例
-浅間山が煙で見えないと午後には強風-
春に山が見えると降り。一例
荒川沿岸は霜が少ない。
春と夏に東の空に入道雲が出ると近いうちに大雨。一例
夏、雲が北東に行くときは利根川大洪水となる。一例
日光の空鳴り。二例
-北鳴りの雷は音ばかりで雨は降らない-
晩秋から冬にかけて赤城山がくっきり見えると強い西風となる。一例
朝、高崎線の汽車の音が良く聞える時、明日も天気がよい。一例
天気の境界線が利根水路上にある。一例
松の移植は西山に雪があるうちに。一例
榛名神社のお札を畑に立てると嵐除けになる。二例
-同、雷がよけられる-
旱魃の時、群馬県板倉神社で雨乞いをすると雨が降る。一例

二、「動物・植物に関する俚諺」三二〇例
蟻の観音参り(行列して移動する)があると大雨が降る。四五例
-蟻が高い所へ巣を移動すると水害となる。-
蛇が道を横切ると雨が降る。三九例
-蛇を多く見かけると雨になる。-
蜂が高い所に巣を作る年は大水が出る。二三例
-蜂が家の廻りに巣を作る年は雨が多い-
-蜂が南側に巣を作る年は台風がこない-
アマガエルが鳴くと、まもなく雨が降る。四〇例
猫が(耳にかかるように)”顔を洗う”と雨が降る。ニニ例
鶏の巣上がりが早いと翌日は晴。一四例
-鶏が夕方おそくまでえさをひろっていると翌日は雨-
オナガ(鳥)が鳴いてさわぐと天気は下り坂。一五例
-オナガが群をなして飛来すると天気は下り坂-
朝くもの巣が露で白くなっているとその日は晴れ。一ニ例
魚が水面で呼吸すると雨になる。五例
-池のコイがはねると雨になる-
    〃     晴になる。一例
秋の夕方、アカトンボがたくさん飛ぶと翌日は天気がよい。九例
夕方ブヨがたくさん飛んでいる時は天気は下り坂。五例
-蚊が餅つけば雨が降る-
モグラが土盛りすると近日中に雨になる。五例
ツバメが高く飛ぶ時は晴れることが多いが低く飛ぶと天気は次第に悪くなる。三例
ツバメが橋の下に巣をつくる時は洪水がない。一例
-ツバメ夏をなさず-
ツバメは暦で日の良い日に飛来したり巣立ったりする。一例
ツバメの群れが南の方へ飛んでゆくと冬が近い。一例
寒い曇り日にスズメが騒げば明翌日は雪。二例
-夕方、スズメが鳴くと天気が変わる-
モズの高鳴き七〇日。一例
-モズのキーキー鳴いた七〇日後に初霜-
モズが鳴くと晴れになる。二例
スズメがえさを一生懸命にひろうと雪になる。一例
ウグイスが早く鳴く年は豊年。一例
ウグイスの鳴き声を聞いて春の近きを知る。一例
キジが鳴くと明日は雨。一例
カモの大群が早く来ると早雪。一例
ヨシキリが陸に上がると、大水が出る。一例
水鳥の巣造りの高さで洪水の有無がわかる。一例
カラスが鳴きながら低く飛びまわる時には急に大雨か大風になる。一例
トンビが高く飛べば大風になる。一例
鳥がさわぐと風になる。一例
渡り鳥が早い年は降雪多し。一例
ミミズが土から出てくると雨になる。三例
ミミズが鳴くと明日は晴。一例
家のネズミが急にいなくなるのは災害の前兆。二例
カエルが家の中に飛び込むと雨になる。一例
イヌが遠ぼえするときは火事がある。一例
ナマズが暴れると地震がくる。一例
雪が少ない年は虫が多い。三例
-暖冬の年は虫が多い-
クモは大風が吹く前に巣をたたむ。一例
ツクツクホウシが嗚き始めると秋が近い。二例
-半夏生になるとカナカナゼミが鳴きだす-
蝶が飛びだすと良い天気になる。一例
雪虫が飛び始めると雪が降る。一例
冬眠していたヘビ、カエルが出てくると啓蟄。一例
雪降(ゆきつぶ)り上りは裸虫の洗濯。二例
ケヤキが水上げすると近いうちに大雨。一二例
-ケヤキが根本から水をすいあげると雨になる-
ケヤキの芽ぶきが不揃いの時は遅霜のおそれがある。四例
夕方、イネの葉先に露が上がると明日は好天となる。六例
落葉が早ければ雪が早い。二例
アメフリアサガオの花をとると雨が降る。二例
ウメの花が下を向いて咲くと春雪が降る。三例
タケの花が咲けば凶年。二例
カキの実の当たり年は台風が来やすい。一例
春、カキの新芽が下にのびたら遅霜・遅雪がある。
キリの葉が裏側を見せると雨。一例
ケヤキの芽だちの良い年は雨が多い。一例
トウモロコシが木の途中から根を出すと台風が多い。一例
ナスの豊作はイネの豊作。一例
朝、ナスの葉がピンと立ってつゆがあると晴。一例
コブシの花が咲くと夏は豊作。一例
ヤナギの枝は雪折れなし。一例
カシの木の植え替えはコムギの花ざかり。一例
カンショの花が咲くと、何か一大事がある。一例
花木の花が季節はずれに咲くときは天候不順。一例

三、「農業に関する天気俚諺」七四例
大雪は豊作の兆し。一七例
-雪の多い年は米(大麦・小麦)が豊作である-
十五夜に雨が降ると大麦が不作。一六例
-十五夜が見えると大麦が豊作-
十三夜に雨が降ると小麦が不作。一一例
-十三夜に晴れると小麦が豊作-
二十三夜に月が輝くと麦は豊作。二例
梅のあたり年は米も豊作。五例
-梅の収穫が少ないとその年、米も不作-
雷の多い年は米が豊作。一例
しけの年は小豆、金時が取れる。一例
土用三日照ると米は豊作。三例
-暑い程、米はとれる-
-照りに飢饉なし-
冬の寒さが厳しいと害虫が少ない。二例
-寒雪が降ると害虫が少い。-
大寒に雨が降らないと田植え水に困る。一例
照る年はごまがとれる。一例
七夕に雨があると豊作である。一例
五風十雨。一例
(五日目くらいに風が吹き、十日目くらいに雨がふると作物にはよいの意)
霜が降ると野菜の甘みが増す。一例
千日の旱ばつ、一日の洪水。一例
(日照りの被害はジワジワくるが洪水では一日で全部失うの意)
遅霜ある時は野菜、果物は不作。一例
冷夏の年は、秋凶作。一例
夏、ほうき星が出る年は不作の場合が多い。一例
秋荒れは半作。一例
寒中の南風は俵を編んで待て。一例
小麦の刈り干しは馬鹿がする。一例
黄色い菊の花盛りが麦の蒔(ま)き時。一例
十一月四日・十四日・二十四日に小豆がゆをして来年の作物の早生・中生・おく生の良し悪しを決める。一例
日照に強い作物(米・麦・ゴマなど)が豊作だと、その年は雨が少ない。一例
梅の土用干を三日三晩のお天気でほす。一例
雪の多い年は麦が豊作。一例
田植えの北風どてら着て寝てろ。一例

四、「日常生活に関する天気俚諺」一三ニ例
家の土台石(玉石)が濡れていると近いうちに雨がふる。三一例
-台所(のコンクリート)が濡れると雨になる-
塩が湿ってくると天気は下り坂。三例
コンブが湿ると天気は下り坂。一例
醬油ビンが汗をかくと大雨になる。一例
ふんどしが湿っぽいから明日は雨。二例
洗濯物の乾きがしとっぽいから雨が近い。一例
障子の動きが悪いから天気は悪くなる。一例
刻み煙草の火がもたないから明日は雨。二例
便所の臭気が強いと天気が変わる。(雨になる)二例
列車の音が東からよく聞えると天気は下り坂。一二例
-同様のもの「地域」にあり-
鐘の音がよく聞えると雨になる一例
かまどの煙が家にこもると天気は下り坂。九例
-煙突の煙が下をはうと雨になる-
鉄ビンやなべのしりに火の粉がつくと風になる。四例
雷が鳴り、ひょうが降ったら節分の残りの豆を庭にまくと早くやむ。三例
-節分の豆を神棚に供えると雷が遠のく-
朝ごはんがこんもりよくたけると天気がよくなる。一例
鍋ものを煮る時、沸湯が中央から始まると晴。一例
手足のあかぎれ(ひび)が痛いときは、翌日西風となる。一八例
神経痛が痛むと天気は下り坂。一六例
-年寄りの足・腰が痛むと天気がくずれる-
-昔の傷あとが痛むときは天気が変わる-
腹が痛いと大霜がある。一例
お風呂に入って手のひらにしわがよると明日は風。一例
子供がおおはしゃぎをすると翌日は雨。三例。(晴)一例
下駄を投げて表が出れば晴、裏が出たら雨。二例
雷の時は蚊張をつれ。一例
砂浜を歩いて足が砂に入ったら雨になる。一例
櫛が通りにくい日は天気が崩れる。一例
親の罰と、こそこそ雨は気が付かないうちに当る。一例
四十浮気と七ツ雨は止みそうで止まない。三例
-四十女と七ツ雨はふり出したらとまらない-
冬至にカボチャを食べると夏病みしない。一例
正月の門松に雪が降りかかると、その年七度降る。五例
初午の早い年は火事が多い。一例
夏の東風は凶年。一例

五、「その他の短期予報」四五二例
月傘日傘は二・三日中に雨となる。六七例
-月が傘をさすと天気は下り坂-
青葉の西(北)風、三日ともたない。四七例
-若葉のころの西風は、三日もたないで雨となる-
朝やけは天気が悪くなる。四五例
-朝焼けは七日のふっかけ-
夕焼けは翌日晴。三六例
-秋の夕焼け鎌をとげ-
入日が良ければ明日は天気。ニニ例
-日没時に西の空が明るいと天気はよくなる-
朝雷は洪水のもと。ニニ例
月傘の中の星がある時、その数だけ日数がたつと雨が降る。ニ一例
朝雨はみのを脱げ。二四例
-朝方の大雨はかならずやむ-
朝雨は女のうでまくり。八例
(たいしたことはないの意)
冬、西風(北風)が吹くと、出雲といって天気がよくなる。一三例
東風(北東風)が吹くと入雲といって天気がくずれる。一五例
西風がやむと翌朝は大霜。四例
雷雨の時、赤い雲が現れると雪が降る。五例
朝霧は晴れの兆。一三例
-朝もやは、おそ晴れ-
入日に雲をよせると明日は雨(風がく吹)一二例
朝虹は七日のしけ(荒れ)五例
南(東・西)の空に土手雲が出ると雨になる。六例
みず雲(帯状の水色の線)が空に出ると近日中に大雨。三例
南東の空に入道雲が出ると急速に雷がくる(雨が降る)五例
-夏戌亥の方の入道雲は雨が来るが辰巳の方の雲は降らない-
夏の入道雲は晴。二例
うろこ雲が出ると翌日は雨か風。三例
西にちぎれ雲が出ると風になる。三例
-南西の方に点々と流れ雲が出ると西風になる-
良い天気にすじ雲が出ると、天気が悪くなる。一例
いぬいの方向に雲が入る(入り雲)と大水のもと。一例
南風がしめっぽい時は雨が近い。三例
-蒸し暑いと翌日は雨-
七ッ(夕方四時)雨は止まない。四例
-夕方からの雨は大雨-
夏の西風は夕立のもと。三例
東が曇ると雨、西が曇ると風になる。二例
三束稲。二例
(三束まるく内に雨が降るの意)
(三束刈る間に雨が降るの意)
天に三日の晴れなし。一例
朝夕温度急変の時天気変る。一例
朝開き。一例
(朝の中輝き、だんだん悪くなるの意)
辰巳の方に入道雲、やがて散ると近いうち雨。一例
北から来る夕立は雨が多い。一例
夜上がりは天気がもたぬ。一例
飛行機雲が現れれば近日中に天気悪くなる。一例
しけの夕映は雨。一例
水たまり水がなくなると雨のもと。一例
水あかが水面に浮き上がると天気変わる。一例
寺の鐘が陰にこもって聞えれば天気は下り坂。一例
春の北風、冬南、いつも東は定降りの雨。一例
夏の夕焼け大水。一例
夏、雷雲が東に立ち、北に回れば夕立ちとなる。一例
雨が強く降っていても、雲が南へ走る。(出し雲)と、じきに雨は止む。一例
夏、曇っていても、巽の方が明るいと天気になる。一例
南東風が吹くときは晴れが多い。一例
入梅時だけは、東風が吹くと天気になる。一例
春の朝夕寒ければ天気良し。一例
朝日焼が白く消えた時は、二・三日天気がもつ。一例
朝日がけの時はくもりとなる。一例
煙がたなびくと明日は晴。一例
星空になると明日は晴天。一例
風向変れば台風がすぎる。一例
嵐の前の静けさ。一例
台風の後は好天気。一例
夏の北風は天気が変る。(悪くなる)二例
夕日と共に風がやむと翌日も風が吹く。三例
風に貸し借りはない。三例
(四月頃北風が吹けば、後は南風になるの意)
西(北西)からちぎれ雲が出てくると大風になる。三例
-白馬が出ると北風-
西が暗くなって丑寅風(北東)または辰巳風(南東)が強い時は大雨(洪水)になる。二例
冬夜どおし風が吹くと翌日は午前中から風止む。一例
白露が出ると夕立や風が吹く。一例
午前中、川に水蒸気が立つと、午後から風が出る。一例
東が曇れば風となる。一例
東の雷音ばかり。三例
西からの雷は麦束三把。二例
北鳴り。三例
-北から来る雷は音だけだ-
-北からの雷はなかなか来ない-
戌亥(いぬい)より始まった雷は必ずこっちへ来る。一例
北からの雷は早く雨が降る。一例
夏、北西の風強く吹くと雷が出る。一例
朝からキラキラ照りつけると雷多し。二例
寒雷は水のもと、寒雷はことでかす。二例
雪の降る晩は温かい。一例
吹雪が光った後は晴天なり。一例
春の雪と叔母の林は怖くない。
雪の音が地上にどんどんと響くと長しけ。一例
冬、月がきらきら輝く時は翌朝は大霜。一例
冬の冷たい南風を霜風といい、翌朝霜がおりる。一例

六、「四季ないしは長期予報」一一ニ例
門松(御松)正月の松飾りに雪がかかるとその年は雪が多い。二八例
-正月の三ヶ日(七日間のうち)に門松に雪がかかると、その年は雪(雨)が多く、米は豊作-
-正月松の内に雪が降るとその年に七度降る-
寒中に大雪が降ればその年は水に困らない。八例
-寒に雪が多いと、夏にはその一〇倍雨が降る-
土用あけのふっかけ雨。五例
(土用あけてからにわか雨がよく降るの意)
八十八夜の別れ霜。六例
一日降りするとその月は雨が多い。四例
-月始めの三か日の間に雨が降るとその月は雨の日が多い-
三日月が立って見えると天気は良く、横になると天気が悪くなる。二例
お正月の天気によって一年間の天気がわかる。一例
小寒に張った氷、大寒にとける。二例
正月に雷が鳴るとその年は雨が多い。一例
正月の〆(しめ)縄は十六日の風に吹かせるものではない。一例
(十五日までに外すの意)
厳寒の冬の時は夏は暑い。一例
寒水(大寒の時)は夏の土用を通って腐らない。一例
冬の夜にもや立つと夏に雨が多い。一例
雪が少ない年は梅雨が長い。一例
春の雨降って土固まる。二例
暑さ寒さも彼岸まで。四例
彼岸の入りに雨が降ると一週間続く。二例
百日のシケでも、彼岸の中日には天気になる。二例
彼岸のころの長雨をくされ彼岸という。一例
二・八月は船頭のあぶれ時。一例
(二月は季節風、八月は南風の日が多く船頭は仕事にならないの意)
梅の実が豊作の年は米も豊作。一例
青葉の北風(夏に北風が吹くと雨)一例
八専(はっせん)八日、間日四日(十二日間のうち四日は雨が降らない)一例
空梅雨の年は秋八・九月頃長雨となる。一例
梅雨のしけが短いと、その年の夏は干ばつ。一例
五月灯籠が雨になると、その年祭は全部雨。二例
梅雨末期に雷が鳴ると梅雨あけが近い。四例
土用ぬのこ(綿入の着物)に寒惟子(麻の着物)四例
-夏の綿入袢天(六月の梅雨時)-
土用半ばに秋風が吹く。二例
土用は後の寒の前。一例
(土用は後半が暑く、寒は前半が寒いの意)
夏、雷が多いとその年は豊作。一例
夏、雨が多いと冬は晴天が多い。二例
冷夏の年は冬の訪れが早い。二例
夕立は馬の背を分ける。一例
片降り片照り。一例
女心と秋の空。四例
-男心と秋の空-
-秋空は七度変わる-
秋の日はつるべ落とし。二例
秋北風に春津波、何時も東は上降りだ。一例
秋西、春向う。三例
(秋の雨は西から、春の雨は南から暗れてくるの意)
-春海の秋山-
-冬山睛、夏海晴-
三の午まである年は火事が多い。一例
冬暖かく静かな日の翌日は天気が崩(くず)れる。一例

七、「地震に関する俚諺」二三例
六つ、八つ風に、四つ日照、五、七が雨に、九が病。一四例
地震のあとは天気が下り坂になる。一例
きじが鳴くと地震が起こる。四例
なまずが騒ぐと地震がくる。一例
ねむの木の葉が夕方になっても閉じない時は地震が起こる。一例
地震は竹やぶ、雷は蚊張の中。一例
井戸水が急に減ると地震がある。一例

八、「その他」
大正時代から昭和の初期にかけて、天気予報を知らせるものは何もなく、農作業をする者や、特に養蚕家は明日の天気を知る必要があった。
そこで昭和の初期、農繁期になると鴻巣警察署に天気予報が提示され、青年団が奉仕活動でそれを見に行き、小旗を立てて知らせた。
川岸の鯨井満男さんの西南の角(火の見やぐら)に予報の旗を立ててたいへん喜ばれた。旗の色で白が晴、赤は曇り、青は雨を表わしていた。

参考文献
関東農政局統計情報部『干害・ひょう害・雪害・寒干害』(一九七九)
熊谷地方気象台『埼玉県の気象災害』(一九七〇)
熊谷地方気象台『埼玉県の気候』(一九七五)
鴻巣消防署『気象記録表』(一九八八)
埼玉県『埼玉県水害誌』(一九四七)
埼玉県『昭和二十二年九月埼玉県水害誌』(一九五〇)

<< 前のページに戻る