北本市史 資料編 自然

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第7章 北本の動物

第2節 北本の水生動物

北本市は、鴻巣市・桶川市・吉見町・川島町の二市二町に囲まれている。東部は洪積世の火山灰台地と沖積低地からなり、池沼が散在し、東端の鴻巣市との境に赤堀川がある。西部は洪積台地とこれを刻む浸食谷、沖積世の泥質堆積物および砂質泥堆積物からなり、宮岡・石戸宿には湧水があり、荒川に注いでいる。西端には荒川がある。
市史編さん事業の一環として水生動物を扱うことになり、水生動物の年間の消長や生活を考慮して調査した。各調査地点(図3)とも、丸網や川虫取り用の網を使用し、三、四十分間調査した。魚類は埼玉県東部漁業組合の理事大畑旭氏と新井万寿夫氏の永年にわたる経験を聞き取り調査によってまとめた。また、荒川の魚類相、写真については福島義一氏にご協力いただいた。併せて、調査中に採集したものも加えた。
現在のところ、北本市には河川の流水にすむ種類や止水にすむ種類を合わせて、八門五七科一三五種の水生動物が確認された(表7)。北本市に生息する水生昆虫・魚類の種類数を埼玉県と比べてみると水生昆虫で二八.五パーセント、魚類で四九パーセントとなる。北本市に水生動物の種類数が多い理由として、荒川・赤堀川などの河川や蓮沼などの池沼があり、水質環境要素が変化に富み、 それぞれに適応した水生動物が生息しているからである。
第二の理由として、北本市における荒川は源頭より一一〇.六キロメ—トルの地点から始まり市内を流れる長さは三.五キロメートルである。夏季は水量が多く流速もある。冬は水量は少ないが流速はある。荒川は南下しながら北本市に入り、高尾橋、荒井橋、城山、下宿、附歩の地点でそれぞれ流路を少しずつ変える。その間、泥質河底の所々に礫底がある。そのために、泥質床で生活する水生動物や礫の表面、礫と礫の空間で生活する水生動物が生息している。したがって、河川型としては下流域であるが、上流・中流域で生活する水生動物と下流域で生活する水生動物が混生している。
第三の理由として、北本市の西側にある宮岡・高尾・石戸宿は開析谷が発達し、各頭部より湧水が出て小川となり荒川に注いでいる。宮岡の湧水は水温一八.五度、水量毎秒一五.一リットル、石戸宿九丁の湧水は水温一七度、水量毎秒二.九リットル(いずれも平成元年九月十四日調査)で年間を通してほとんど水温・水量とも変化がない。河川床は泥質底と砂底からなり、水はきれいで、狭温性の動物が生息するところである(図4)。
第四の理由として、荒川河川敷にある蓮沼、東部・南部に点在する池沼には止水性の水生動物が多い。現在のところ、生活雑排水の流入が少なく、水質環境が保持されている。そのために、今となっては珍しいコバンムシ、アオヒゲナガトビケラの一種などが生息している。

図3 水生動物調査地点図


図4 宮岡における湧水流路断面図

流路の平均断面積:319.3㎠、水面の幅:57.7㎝
水底の幅:45.3㎝、深さ:6.2㎝、流速:47.2㎝/秒


表7 北本市に生息する水生動物
(+++…きわめて多い、++…普通、+…きわめて少ない)
水 生 動物 荒 川 東部の河川 (赤堀川等) 西部の小川 湧水 沼・水田 
1 爬虫類 
 カメ科 
  クサガメ +++
2 両生類 
 ヒキガエル科 
  ヒキガエル ++ 
 アマガエル科 
  アマガエル ++ ++ 
  シュレーゲルアオガエル ++ 
 アカガエル科 
  ニホンアカガエル ++ ++ ++ 
  トウキョウダルマガエル ++ +++
  ウシガエル +++
  ツチガエル ++ ++ 
3 魚類 
 ウナギ科 
  ウナギ +++++ 
 アユ科 
  アユ +++
 コイ科 
  ウグイ 
  マルタウグイ 
  オイカワ ++ 
  ハス 
  ワタカ ++ ++ 
  ソウギョ
  アオウオ 
  ハクレン 
  コクレン 
  カマツカ 
  ツチフキ +++
  タモロコ ++ ++ 
  モツゴ +++++ ++ ++ 
  二ゴイ ++ 
  コイ +++++ ++ ++ 
  キンブナ 
  ギンブナ 
  ゲンゴロウブナ ++ +++
  タイリクバラタナゴ ++ ++ ++ 
  ヤリタナゴ 
  アブラハヤ 
 ドジョウ科 
  ドジョウ ++ ++ ++ 
 ギギ科 
  ギバチ 
 ナマズ科  
  ナマズ ++ ++ 
 メダカ科 
  メダカ  ++ ++ 
 タイワンドジョウ科 
  カムルチ— ++ 
 バス科 
  オオクチバス  ++ 
 ハゼ科  
  ヨシノボリ ++
  チチブ 
 トウゴロイウシ科: 
  ペペレー 
4 水生昆虫類 
 カゲロウ目 
 フタオカゲロウ科 
  オオフタオカゲロウ +++
 チラカゲロウ科 
  チラカゲロウ 
 ヒラタカゲロウ科 
  ナミヒラタカゲロウ 
  シロタ二ガワカゲロウ +++
  サツキヒメヒラタカゲロウ 
  コカゲロウ科 
  フタバカゲロウ +++
  タマリフタバカゲロウ +++
  フタバカゲロウの1種 
  コカゲロウの1種 
 マダラカゲロウ科 
  オオマダラカゲロウ ++ 
  オオクママダラカゲロウ ++ 
  コスタニアマダラカゲロウ ++ 
  アカマダラカゲロウ +++
 ヒメカゲロウ科 
  ヒメカゲロウの1種 
 キイロカワカゲロウ科 
  キイロカワカゲロウ ++ 
 アミメカゲロウ科 
  アミメカゲロウ +++
 トンボ目 
 イトトンボ科 
  ホソミイトトンボ ++ ++ 
  クロイトトンボ ++ 
  オオセスジイトトンボ ++ 
 サナエトンボ科 
  ダビドサナエ 
 オニヤンマ科 
  オニヤンマ +++
 トンボ科 
  シオカラトンボ ++ +++
 カワゲラ目 
 オナシカワゲラ科 
  オナシカワゲラの1種
 Nemoura sp 
+++
 半翅目 
 アメンボ科 
  アメンボ ++ ++ ++ ++ 
 マツモムシ科 
  マツモムシ 
 タイコウチ科 
  タイコウチ 
  ミズカマキリ ++ 
  ヒメミズカマキリ 
 コバンムシ科 
  コバンムシ +++
 ミズムシ科 
  チビミズムシ ++ 
  ミズムシ +++
  ミヤケミズムシ ++ 
 甲虫目 
 ゲンゴロウ科 
  マメゲンゴロウ ++ ++ 
  ヒメゲンゴロウ +++
  キベリマメゲンゴロウ 
  ツブゲンゴロウ +++
  チビゲンゴロウ 
  ゴマダラチビゲンゴロウ 
  キベリクロマメゲンゴロウ ++ 
  ハイイロゲンゴロウ 
  オオイ チモ ンジシマゲンゴロウ ++ 
  コシマゲンゴロウ 
  シマチビゲンゴロウ ++ 
  セスジゲンゴロウ 
  オオヒメゲンゴロウ 
 ミズスマシ科 
  オナガミズスマシ +++
 ガムシ科 
  マグソガムシ 
  セマルケシガムシ 
  アカケシガムシ 
  キバネケシガムシ 
  ウスモンケシガムシ 
  シジミガムシ 
  キイロヒラタガムシ 
  チビヒラタガムシ 
  キベリヒラタガムシ 
  ヒメガムシ 
  コガムシ 
  ゴマフガムシ 
  トゲバゴマフガムシ 
 セスジガムシ科 
  セスジガムシ 
 トビケラ目 
 ヒゲナガカワトビケラ科 
  ヒゲナガカワトビケラ +++
 シマトビケラ科 
  ウルマーシマトビケラ +++
  ギフシマトビケラ 
  コガタシマトビケラ 
  エチゴシマトビケラ ++ 
 ヒゲナガトビケラ科
  アオヒゲナガトビケラの1種
Mystacides sp  
 双翅目 
 ガガンボ科 
  ガガンボの1種
 Tipula sp. TA 
++ 
  ガガンボの1種
Tipula sp. TB  
  ガガンボの1種
Tipula sp 
++ 
  ガガンボの1種
 Eriocera sp. ED 
++ 
 ユスリカ科 
  ヌマユスリカの1種
Macropelo pia sp  
++ 
  エリユスリカの1種
Euorthoc ladius sp. BB  
++ 
 ミズアブ科 
  ミズアブの1種
Oxycera sp 
++ 
 プユ科 
  キアシオオブユ ++ 
  ウマブユ 
 ホソカ科 
  ニッポンホソカ 
5甲殻類 
  ホウネンエビ ++ 
  カブトエビ ++ 
  ヨコエビ +++++ 
  ミズムシ +++
  ミズムシの1種 
Asellus kumaensis 
  スジエビ 
  テナガエビ 
  ヌカエビ ++ ++ 
  アメリカザリガニ ++ +++
  モクズガニ 
6 環形動物 
  ヒメオヨギミミズ 
  エラミミズ ++ 
  ミドリビル ++ 
7 軟体動物 
  オオタニシ +++
  ヒメモノアラガイ 
  サカマキガイ +++
  カラスガイ 
  ドブガイ ++ 
8 扁形動物 
  オホウズムシの1種
Bdello cephala sp  
++ 

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