北本市史 資料編 原始

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第2章 遺跡の概要

第2節 江川流域の遺跡

榎戸(えのきど)Ⅰ遺跡 (大字下石戸下字久保)
この遺跡は、江川から東にのびる小支谷に臨み、西傾する台地の肩部に位置する。遺物散布の確認範囲は、二〇×二〇メートルと狭いが、分布密度はかなり高い。
採集された石器としては頁岩(けつがん)製の石刃があり、土器としては縄文時代草創期の井草式、早期の茅山式、および前期の諸磯a式などの土器片がある。また、須恵器片もある。
石刃(図164)1は、たて長の剝片(はくへん)で表面は斜めに稜線が走って三面の剝離面をもち、基部右隅には再加工が施されている。裏面は第一次打撃による剝離面となっている。表面と裏面では打撃方向が異なっている。この石器は、旧石器時代に属するものか、縄文草創期に属するものかよくわからない。
2は縄文草創期の井草式土器の破片と考えられ、細い繩文が左下がりに施されている。3は条痕文が施されており、縄文早期の茅山式土器の破片である。4は細かい粒の縄文が羽状に施された破片で、縄文前期の諸磯a式であると考えられる。5は、縄をたてにころがして施文し、周囲を太い沈線で区画した文様構成をもった土器片で、縄文中期終末の加曽利EⅣ式である。6は平安時代ころの須恵器の破片である。
以上のように、この遺跡は立地条件が良いために、少なくとも縄文草創期以来、五時期にわたって生活が営まれた複合遺跡であるということができる。

図163 榎戸Ⅰ遺跡位置図

図164 榎戸Ⅰ遺跡出土遺物実測図及び拓影図

写真87 榎戸Ⅰ遺跡現状

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