北本市史 資料編 原始

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第2章 遺跡の概要

第2節 江川流域の遺跡

デーノタメI遺跡 (大字下石戸下字久保)
本遺跡名である「デーノタメ」とは、土地の人が当地の強力な湧水に対して呼ぶ呼称である。昭和四十年代には、一年じゅう台脚下から水音をたてて噴出しており、約一〇〇〇平方メートルの自然の泉池を形成していた。北本・桶川両市の上水道の給水源も、この湧水の隣接地にある。
遺跡は、この池から西方約五〇メートルの沖積地にわたってひろがっており、その大部分は栗林となっている。散布している遺物は縄文時代中期の土器片や、土師器(はじき)の破片である。遺跡の性格としては、縄文時代中期および古墳時代の集落跡の可能性がつよいが、立地が良いので、他の時代の遺構も存在している可能性もある。
図179~図182は、昭和六十三年に試掘調査のさい出土した縄文土器頰の拓本・実測図である。図179は、縄文時代中期の勝坂式土器の口辺部の破片である。文様の主流は、太い沈線と刻み目・爪形文のある隆起文から成り、沈線の「十字」文や三叉文・渦巻文(うずまきもん)なども組み合わせている。この時期の土器は、火焰形(かえんがた)土器に代表されるように、縄文土器のなかでは最も豪華な文様が作り出されていた。図180も、勝坂式土器の口辺部で、上段は「把手(とって)」部分である。
図181も勝坂式土器の口辺部であり、「窓枠」状の区画内を太い沈線で充塡(じゅうてん)している文様が中心である。図182は、勝坂式土器・加曽利E式土器などの口辺部や胴部の破片である。
図182の15の石器は、旧石器時代の角錐状(かくすいじょう)石器と考えられ、孔(あな)をあける道具と推察される。

図178 デーノタメⅠ遺跡位置図

写真96 デーノタメⅠ遺跡現状

図179 デーノタメⅠ遺跡出土遺物拓影図

図180 デーノタメⅠ遺跡出土遺物拓影図及び実測図(1)

図181 デーノタメⅠ遺跡出土遺物拓影図及び実測図(2)

図182 デーノタメⅠ遺跡出土遺物拓影図及び実測図(3)

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