北本市史 資料編 古代・中世

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第1章 古代の武蔵と北本周辺

延長五年(九二七)十二月二十六日
『延喜式』が撰上される。その式文中に武蔵国に関する記述がみられる。

33 延喜式(1)  〔新訂増補国史大系〕
 (前略)
   巻三 神祓三 臨時祭
名神祭(2)二百八十五座
(中略)
氷川神社一座(3)   金佐奈神社(4)一座巳上武蔵国
 (中略)
座別絁五尺、綿ー屯、糸ー絢、五色薄絁各一尺、木綿二両、麻五両、裏料薦廿枚、若有大禱者、加絁五丈五尺、以布一端代絲ー絢、
   巻九 神祇九 神名上
 天神地祇惣三千一百卅二座
 (中略)
 武蔵国卅四座大二座
        小冊二座
 (中路)
 足立郡四座大一座
       小三座
  足立神社      氷川神社名神大、月次新嘗
  調神社       多気比売神社
 横見郡三座
       小
  横見神社      高負比古神社
  伊波比神社
 入間郡五座
       小
  出雲伊波比神社   中氷川神社
  広瀬神社      物部天神社
  国渭地祇神社
 埼玉郡四座
       小
  前玉神社二座    玉敷神社
  宮目神社
 (後略)
〔読み下し〕
33 略
〔注〕
(1)えんぎしき 醍醐天皇の命により藤原時平・忠平らが延喜五年(九〇五)に着手し、延長五年(九二七)に完成させた、律令格に対する施行細則の古代法典である。さきの「弘仁格」「弘仁式」「貞観格」「貞観式」と、同時に編纂された「延喜格」とともに三代格式と総称する。
(2)神祇官において、その年の稲の豊穣を祈る祭り、二月四日に行われる。
(3)大宮市高鼻町鎮座の氷川神社
(4)児玉郎神川村鎮座の金鑚神社
〔解 説〕
延喜式五〇巻は大別すると、神祇関係の式(巻一~一〇)、太政官八省関係の式(卷十一~四〇)、諸司の式(巻四一~四九)、雑式(巻五〇)に分類される。そして各関係の律令的規定の内容が微細に記されており、恰かも百科便覧的内容をもっており、日本古代史についてはもちろんのこと地域史研究についても数少ない基本史料となっている。その中でも神名帳は(巻九〜一〇)が二分の一を占めているが、これは貞観年間(八五九~七七)以降に神階叙位が盛んに行われ、神社の政治的、社会的重要性が増したためであろう。その内容の豊富さゆえ古来からその史料性については有名で、同式に記載されている神社は式内社として社格を許していた。
地域史関係では、土地・租税・軍事・交通等の関係記述が注目され、全体理解は勿論のこと、他出史料の補強という面からも見過ごせない。租税関係式に見られる特産物や数量、貢納状況は一覧表的ながらきわめて高い史料価値をもっている。
延喜式は、朝廷の儀式や年中行事、公事等の記事が豊かだったため、後世、公家の間で有職故実の面からも重要視され、珍重されたため、大切に保存され今日に伝えられた。

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