北本市史 資料編 古代・中世

全般 >> 北本市史 >> 資料編 >> 古代・中世

第2章 中世の北本地域

第2節 南北朝・室町期の展開

応仁二年(一四六八)三月五日
河関田畑の清水三郎二郎は、鳥居御房に売り渡す那智山旦那職在所として、「ふかい」などの地を書上げる。

166 旦那在所注文案  〔米良文書〕
河関田はた三郎二郎重代相伝、武蔵国旦那知行分在所之事
みかしり一円ます田一円
西ちやうのはな一円
ふかい一円大ぬま一円
野ロー円おかのや一円
かしま一円
此里々惣先達円福寺のうんこうと申者也
  応仁二年 戊子 三月五日  三郎二郎
鳥居御房へ永代売渡申候
〔読み下し〕
166 略
〔解 説〕
本史料は、河関田畑の清水三郎二郎が、烏居御房へ売渡すため、重代相伝の武蔵国内の旦(檀)那の在所(地)を書上げたものである。この在所に、「ふかい」が見えるが、これは足立郡深井村、すなわち本市深井を指していると思われ、それが事実とすれば当地の初見史料となる。室町後期に、当地に紀伊国の熊野信仰が浸透していたことを示すものとなる。この他の在所は、幡羅郡三ケ尻(熊谷市)、同郡増田・庁鼻和(深谷市)、榛沢郡大沼(同市)、野口・岡谷・鹿島(不詳)である。清水二郎三郎は本年十二月二十八日付けで鳥居御坊に武蔵国一円の檀那を九貫文で売り渡しているので、本書上げはそのためのものといえよう。なお、この両人はいづれも熊野山の御師であろう。

<< 前のページに戻る