第2章 村の生活

第4節 水の管理と争い

1　用水浚いと争い

１４１　嘉永六年（一八五三）八月　谷田用水御差配浚自普請願
　　（国立国会図書館所蔵『見沼井筋騎西領用水配中御用留』より）
　　　　　乍恐以書付奉願上候
武州足立郡鴻巣宿地内字宮地堰用水組合壱宿拾六ヶ村役人一同奉願上候、是迄年々夏三季藻刈被　仰付、差配被成下難有奉存候、然ル所谷田用水堀是迄年々浚自普謂付候得共数ヶ村故行届キ兼、近年格別床高ニ相成用水行届キ兼末水村々甚難渋仕候ニ付、元荒川浚御普請御目論見の時節一同御目論見被成下、来ル寅春より藻刈年限中浚自普請被 仰付御差配被成下置候ハゝ以来組合村々用水差支も有之間敷と奉存候間、何卒以　御慈悲ヲ御聞済被下置候様奉願上候、以上
　　　　　　江川太郎左衛門御代官所
　　　　　　武州足立郡鴻巣宿
　　　　　　　　百姓代　金　兵　衛　㊞
　　　　　　　　年　寄　弥　兵　衛

　　　　　　上田清右衛門知行所
　　　　　　小林带刀
　　　　　　同州同郡上生出塚村
　　　　　　　　　給々惣代
　　　　　　　　百姓代　紋　次　郎
　　　　　　　　与　頭　文　　　蔵
　　　　　　　　名　主　寅　　　蔵

　　　　　　細田猪之助知行所
　　　　　　同州同郡下生出塚村
　　　　　　　　百姓代　兼　次　郎
　　　　　　　　与　頭　磯　五　郎
　　　　　　　　名　主　庄　　　八

　　　　　　藤堂乗之丞知行所
　　　　　　同州同郡上谷村
　　　　　　　　百姓代　薄　太　郎
　　　　　　　　与　頭　元　次　郎
　　　　　　　　名　主　浅右衛門

　　　　　　大河内金兵衛知行所
　　　　　　同州同郡下上谷村
　　　　　　　　百姓代　千　代　吉
　　　　　　　　与　頭　義　　　助
　　　　　　　　名　主　利右衛門
　　　　　　
　　　　　　同　
　　　　　　同州同郡中曽根村
　　　　　　　　百姓代　喜　代　松
　　　　　　　　与　頭　徳　次　郎
　　　　　　　　名　主　吟　十　郎

　　　　　　日下部権座衛門知行所
　　　　　　日下部岩太郎
　　　　　　同州同郡深井村上下
　　　　　　　　　　給給惣代　　　
　　　　　　　　百姓代　多右衛門
　　　　　　　　与　頭　留　　　吉
　　　　　　　　名　主　七郎右衛門

　　　　　　内藤半六郎知行所
　　　　　　同州同郡上宫内村
　　　　　　　　百姓代　仁左衛門
　　　　　　　　与　頭　兼　次　郎
　　　　　　　　名　主　彦　　　八

　　　　　　数原玄忠知行所
　　　　　　同州同郡同村
　　　　　　　　百姓代　喜　惣　治
　　　　　　　　名主代　万右衛門
　　　　　　　　与　頭

　　　　　　小林帯刀知行所
　　　　　　同州同郡下宮内村
　　　　　　　　百姓代　乙　五　郎
　　　　　　　　与　頭　治右衛門
　　　　　　　　名　主　源　　　蔵

　　　　　　三上豊前守知行所
　　　　　　同州同郡北下谷村
　　　　　　　　百姓代　幸　　　蔵
　　　　　　　　与　頭　亀　次　郎
　　　　　　　　名　主　小左衛門

　　　　　　西尾伊三郎知行所
　　　　　　同州同郡中下谷村
　　　　　　　　百姓代　四　郎　次
　　　　　　　　与　頭　重　次　郎
　　　　　　　　名　主　太　郎　次

　　　　　　西尾伊三郎知行所
　　　　　　同州同郡南下谷村
　　　　　　　　百姓代　治　兵　衛
　　　　　　　　与　頭　七　五　郎
　　　　　　　　名　主　新左衛門

　　　　　　世尊院　寺領
　　　　　　藤堂乗之丞知行所
　　　　　　同州同郡上常光村
　　　　　　　　　　　　給々惣代
　　　　　　　　百姓代　甚　　　助
　　　　　　　　与　頭　万　次　郎
　　　　　　　　名　主　半　次　郎

　　　　　　横田五郎三部知行所
　　　　　　阿部甚三郎
　　　　　　同州同郡別所村
　　　　　　　　　　　　給々惣代
　　　　　　　　百姓代　千代之助
　　　　　　　　与　頭　由　之　助
　　　　　　　　名　主　源　　　七

　　　　　　日下部岩太郎知行所
　　　　　　同州同郡古市場村
　　　　　　　　百姓代　重　五　郎
　　　　　　　　名主代兼丈　　　八
　　　　　　　　与　頭

　　　　　　藤田五郎三郎知行所
　　　　　　同州同郡山中村
　　　　　　　　百姓代　惣　　　八
　　　　　　　　与　頭　清　　　八
　　　　　　　　名　主　倉　之　助
　用水御掛り
　　御役人中様
　　前書の通奉願候処、於御場所雄被成御取上旨被仰渡願書被御下ケ奉請取候、依之写江継添ヲ以御請印形奉差上、候以上

　丑八月　　右百姓代　金　兵　衛　印
　（署名前文に同じにつき以下四七名略）
　　用水御掛リ
　　　御役人中様
解説　元荒川から取水する谷田用水は鴻巣宿内の宮地堰で取水し、市域東部の台地縁辺部を東南に流下し、深井村、上・下宮内村、古市場村、山中村を貫通している。
この資料は、この谷田用水の恩恵を蒙っている一宿一六か村で作っている組合村々が、用水路維持のため夏に行う三回の藻刈と同様、近年水路の床が上って末端まで用水がうまく行届かないので浚せつ普請工事をやらせて欲しいとの願書である。普請に先立つ目論見（工事計画）は今年の元荒川浚普請目論見の時に一緒に行ってもらい、来る寅年の春から藻刈り同様用水掛（幕府四川用水御普請役）の監督のもとに実施できるよう願い出たものである。ただし、この願いは却下され実施されなかった。