第1章 政治・行政

第3節 大正期の村政

2　河川改修と水防

60　大正十年（一九二一）三月　河川改修工事につき土地買収に関する請願書案
　　（旧石戸村文書）
　　　　河川改修工事二付土地買収二関スル請願書案
謹テ請願仕候、今般御施行相成候荒川河川改修工事区域ニ関シ新川掘鑿ノ地区中、左岸大里郡久下村付近ヨリ北足立郡平方村マテ、右岸比企郡北吉見村ヨり入間郡植木村ニ達スル沿岸土地ハ、出水ノ都度最モ多量ニ肥料分ヲ含有セル濁水沃土沈澱シテ良畑ト化シ、且該地域内ハ概シテ桑園ニシテ音反歩ヨリ生スル桑葉ニ対シ収繭高ハ春秋弐回ノ養蚕ヲ通シテ収繭量弐拾貫ヲ降ラス、現時ノ繭価皂貫目ニ付七円ト見做シ之ヲ計算スルトキハ反金百四拾円ヲ得、而シテ之ニ要スル経費金弐拾円ト見積之ヲ控除スルモ尚金百弐拾円ノ利益ヲ得申候故ニ、現今売買セラルヽ壱反歩ノ代金ハ最高ハ百円ヨリ最低四百円位ノ標準ニ御座候
想フニ新川掘鑿ニ要スル土地ノ御買収ニ付テハ、土地ノ実況ニ基キ相当時価ヲ以テ御処（ママ）致セラルヽコトヽハ確信仕候へ共、万一現今ノ時価ニ反シ御買収セラルヽアランカ土地ヲ買収セラルヽ農家ハ誠ニ苦痛ニ堪エサルノミナラス、実ニ本村治ニ及ホス影響尠少ナラスト存候、今茲ニ関係村以外ノ上流及下流に位スル町村ノ土地ニ就キ調査スル所ニ依レハ、上流方面ハ流域狭隘土地ノ傾斜甚シク、水勢猛烈ニ急転直下シ表土ハ流失シテ沃土ト認ムへキ処尠ク、又下流方面ハ土地極メテ低湿ニシテ地質悪化シ普通作物ノ成育充分ナラス、往々山林原野ノ点在スル箇所モ有之候、之ヲ本村ノ土地ニ比較スルトキハ土地ノ価格及小作料ニ徴スルモ約三倍ノ相達アルヲ被認候何卒前陳ノ事情御洞察ノ上、本村民ノ希望ヲ納レラレ土地ノ善悪ヲ御精査ノ上真価ヲ失ハス御買収相成候様、閣下ノ御賢慮相仰キ度、茲ニ本村会決議ヲ以テ此段及請願候也
　　大正十年三月二十五日
　　　　　　　埼玉県北足立郡石戸村長
　内務大臣　床次竹二郎殿