第1章 政治・行政

第5節 北本宿村の成立

1　戦時下の行政

76　昭和十四年（一九三九）十二月　紀元二千六百年奉祝実施要綱並びに紀元二千六百年元旦の興亜奉公日に関する件
　　（中丸　加藤一男家文書三八―一）
　　昭和十四年十二月四日　　　　埼玉県総務部長
　　　各市町村長殿
　　　　紀元二千六百年新年奉祝実施要綱並ニ
　　　　紀元ニ千六百年元旦ノ興亜奉公日ニ関スル件
標記ノ件ニ関シテハ、昭和十四年九月二十八日次官会議ニ於テ別記要綱ノ通決定セル旨、内閣書記官長・内務次官・文部次官連名ヲ以テ通牒有之候条、之力実施方ニ付キ貴管下各種団体トモ密接ナル連絡ヲトラレ、万遺憾無キヲ期セラレ度、此段及通牒候
　　　　　　　　記
　　（一）紀元二千六百年新年奉祝実施要綱
　　　　　ニ関スル件

一、	趣　　旨
	昭和十五年歳旦ニ当り、事変下ニ迎フル紀元ニ千六百年ノ厳粛ナル意識ヲ体得シ、皇室ノ聖徳ヲ歓迎シ聖寿ノ無窮ヲ寿キ奉ルト共ニ、愈々尽忠報国ノ清神ヲ昂メ皇運扶翼ノ実ヲ挙ケ、新東亜ノ建設ニ邁進スへキ国民ノ覚悟ヲ神明ニ誓フノ趣旨ノ下ニ奉祝ヲ行コト
二、	実施方法
（一）	各家庭ニ於テハ早旦必ズ最寄神社ニ参拝スルコト
（二）	当日午前九時ヲ期シ「国民奉祝ノ時間」ヲ設定シ各家庭其ノ他ノ場所ニ於テ夫々宮城遥拝並ニ万歳奉唱ラ行フコト。此ノ為同時刻ニハ汽笛、サイレン、鐘、其ノ他適当ナル周知方法ヲ講ズルコト、尚ラヂオハ同時刻ニ「国民奉祝ノ時間」ノ放送ヲ行フコト。
（三）	官公衙、学校、各種団体、銀行、会社、工場等ニ於テハ奉拝式又ハ祝賀式ヲ行フト共ニ本文趣旨ノ徹底ヲ図ルコト
（四）	市町村ニ在リテハ市町村民ノ為、神社、学校、公会堂等、適当ナル場所ニ於テ祝賀ノ方法ヲ講ジ本文趣旨ノ徹底ヲ期スルコト
（五）	奉拝式、又ハ祝賀式ニハ成ルベク紀元ニ千六百年奉祝会選定ノ「紀元ニ千六百年頌歌」ヲ斉唱スルコト

備　　考

（一）	実施方法中、（一）ノ神社参拝ニ付テハ、市町村等ニ於テ夫々神社ト打合ノ上成ルベク歳旦祭ニ参列シ得ル様措置スルコト
（二）	実施方法中、（五）ノ「紀元ニ千六百年頌歌」ノ斉唱ハ国歌斉唱ヨリ後順位トスルコト
（三）	「紀元二千六百年頌歌」ニ関シテハ既ニ小学校長宛送付済ニ付キ管下小学校長ニ問合ハセラレ度

　　（二）紀元二千六百年元旦ノ興亜奉公日
　　　　　実施上ノ注意
明年一月ノ興亜奉公日ハ恰モ光輝アル紀元二千六百年ノ元旦ニ際会スルノデ、当日全国民ハ悠久ナル国史ノ跡ヲ偲ビ「紀元二千六百年新年奉祝実施要綱」ノ趣旨ニ則り奉祝ノ誠ヲ捧グルト共ニ、国民生活綱要ヲ一層遵守励行シ真ニ戦時下国民トシテノ模範的生活ヲ送ルベキデアルガ、特ニ左記事項ニ就テハ格別ノ考慮ヲ払フコト

一、	松飾り其ノ他新年恒例ノ諸事万端ハ時局柄簡素ニスルコト
二、	虚礼的ノ年賀状及年始贈答ノ類ハー切之ヲ廃止スルコト
三、	屠蘇ヲ祝フコトハ我国古来ノ慣行ニアツテ、単ナル飲酒トハ趣ヲ異ニスルヲ以テ敢テ之ヲ禁止スルノ要ハナイカ、屠蘇ニ名ラ藉リテ飲酒ノ傾向ヲ助長スル結果ニナラヌ様留意スルコト

　経済戦強調週間ニ際シ特ニ実践スベキ事項

一、	生活ノ刷新ニ関スル事項
1.	年末年始ニ際シテノ贈答ハ之ヲ廃止スルコト
2.	忘年会・新年会宴等ハ之ヲ差控へルコト
3.	新年ノ奉祝ニ当リテハ厳粛質素ヲ旨トスルコト
4.	年賀状・年賀広告ノ類ハ特ニ必要ナル範囲ニ之ヲ止ムルコト
二、	物資ノ節約ニ関スル事項
1.	買油ヲ為サザルハ勿論、物資ノ活用ヲ図り特ニ新年ニ際シテノ衣類調度等ノ新調ヲ見合スコト
2.	年末年始ノ売出、広告、装飾、福引等ハ之ヲ控へ目ニスルコト
3.	価格料金ノ引上ヲ極力避クルト共ニ、販売者ハ勿論購買者モ公定価格ヲ遵守スルコト
三、	貯蓄ノ実行ニ関スル事項
1.	官公署、銀行、会社、工場、等ノ勤務者ハ年末賞与ヲ極力貯蓄ニ当ツルコト、特ニ殷賑産業関係者其ノ他収入ノ増加セル向ニ在リテハ高率貯蓄ヲ実行スルコト
2.	国債又ハ貯蓄債券ノ応募ニ努ムルコト
3.	貯蓄組合へ進ンデ加入スルト共ニ、毎月ノ貯蓄額ノ増加ニ努ムルコト