第2章 産業・経済

第2節 近代産業の発展

3　生産基盤の整備

131　大正六年（一九一七）十二月　赤堀川及び高谷堀改修工事に関する訴訟
　　(別所 柳井一郎家文書一五一)
　　訴訟経過報告書
　　原告　西川為四郎
　　被告　中丸村加納村常光村耕地整理組合
（一）原告ハ大正六年十月二日別紙ノ如キ訴状ヲ宇都宮裁判所ニ提シ被告ニ対シ金二千四百三十一円三十七銭及損害利息ノ請求ヲ為シタリ
（二）右裁判所ハ同年十月四日第一回口頭弁論期日ヲ同年十月三十日卜指定シタリ
（三）小生八同年十月十日被告耕地整理組合長新島伊助氏ヨリ訴訟委任ヲ受ケ被告訴訟代理人トナレリ
（四）被告訴訟代理人ハ同年同月二十二日宇都宮地方裁判所ニ答弁書ヲ提出シ原告ノ誚求ニ応スル能ハサル事由ヲ開陳シタリ
（五）同年十月三十日ノ第一回口頭弁論期（日脱カ）ニ於テ原告訴訟代理人ハ訴状ニ基キ詳細陳述スル所アリ、被告訴訟代理人ハ答弁書二基キ詳細答弁シ以テ原告ノ本訴請求ノ不当ナルコトヲ陳述シ且、訴状記載ノ赤堀改修及高谷堀改修其ノ他七カ所（其ノ工事金六千八百九十九円七拾九銭）中ニモ増工事卜然ラサルモノ存在スルヲ以テ、其ノ内容ヲ明カニスルニアラサレバ金千六百十四円四十四銭ノ所謂増工事卜紛交スルノ虞アルガ故ニ其ノ内容ヲ開示セラレ度キ旨、及原告ニ於テ金千六百十四円四十四銭ノ所謂増工事ノ内容ヲ詳細ニ開示スルニアラサレバ、概括的ニ之ヲ否認スル外具体的答弁ヲ為ス能ハサルガ故ニ此ノ点モ亦具体的ニ開示セラレ度キ旨申述シタル処、原告訴訟代理人ハ即時之ヲ開示スルコト能ハサル為弁論続行期日ノ指定ヲ求メ、裁判所ハ第二回弁論期日ヲ大正六年十一月二十日卜指定シ閉廷シタリ
（六）内同日第二回口頭弁論期日ニ原告訴訟代理人ハ別紙ノ如キ（甲）請負金額精算書ヲ提出シテ金六千八百九拾九円七十九銭ノ請負工事ノ具体的内容及金額ヲ説明シ且、保証金授受ノ点並（普カ）請負金授受ノ点ヲ詳述シ尚（乙）工事費ハ予算明細書及構造物費明細書ヲ提出シテ所謂金壱千六百拾四円四拾四銭ノ増工事ノ箇所ヲ説明シタルヲ以テ、被告訴訟代理人ハ答弁補充書ノ一及略図ヲ以テ詳細ニ原告主張ノ不当ナルコトヲ極力弁論シ、裁判所ハ第三回口頭弁論期日ヲ大正六年十二月十一日卜指定シ閉廷シタリ
（七）同日ノ第三回口頭弁論期日ニハ原告訴訟代理人ハ原告ノ主張事実ヲ立証スル為、証人北野技手・三村助手及西川俊郎・菊地弥太郎四名ノ訊問ヲ申請シ尚臨検ヲ求メ現場ニ於テ右証人四名ヲ訊問セラレ度キ旨申立テタリ、被告訴訟代理人ハ之ニ対シ答弁補充書ノ二ヲ以テ工事請負規程（契約ノ内容）ニヨレハ請負工事ノ引渡ハ請負人タル原告ニ於テ工事竣工ノ届出ヲ為シ、注文者タル被告ハ右届出ニ基キ検査ヲ遂ケ完全ナル竣工ト認メ検査証ヲ交付シタル時ハ即該工事ノ授受ヲ了シタルコトトナルモノナルニ拘ハラス、原告ハ不正工事ヲ為シ検査不合格トナリタルモノナルガ故ニ請負工事ノ引渡ナキコトヲ陳弁シ且、原告ノ立証ニ対シ異議ナキ旨ヲ供述シタリ、依テ裁判所ハ証人ハ北野技手・三村助手及西川俊郎三名ヲ浦和区裁判所ニ嘱託シテ現場ニ於テ取調ブベキコトノ証拠決定ヲ言渡シ、証人菊地ノ申請ハ之ヲ留保シ、現場ニテ証人ヲ取調ブベキ期日ハ浦和区裁判所ニ於テ指定スベキコトニ属シ目下未定ナリ
　以上ハ今日迄ノ本件民事訴訟ノ大略ノ経過ニ候ニ付、右報告候也
　　大正六年十二月二十六日
　　　被告訴訟代理人　弁護士　畑　義三
中丸村加納村常光村耕地整理組合
　　　組合長　新島伊助殿
　訴状
　　栃木県宇都宮市今小路町六十七番地
　　原告西川為四郎
　　同県□□□□□
　　右訴訟代理人弁護士
　　　新　江　寅
　　埼玉県北足立郡中丸村
　　被告 中丸村加納村常光村耕地整理組合
　　　右代表者組合長　新島伊助
　工事請負金請求事件請求ノ目的物
一 金四百弐拾六円九拾参銭也 工事請負残金
一 金四百円也　保証金
一 金千六百拾四円四拾四銭　増工事金
　以上三口二対スル訴状送達ノ日ヨリ
　執行済迄年五分ノ割合ニ依ル損害金
　以上金銭ノ支払ヒヲ請求スルニアリ
　　　　一定ノ申立
一 被告ハ原告ニ対シ第一金四百弐拾六円九拾参銭也・第二金千六百拾四円四拾四銭也・第三金四百円也及ヒ以上三口ノ金額ニ対シ大正六年十月十日ヨリ執行済迄年五分ノ割合ニヨル損害金ヲ支払フベシ、訴訟費用ハ被告ノ負担トストノ御裁判仰キ度尚御下命ノ保証供託スヘキニヨリ仮執行ノ宣言仰キ度候
　　　　請求ノ原因

一	大正六年四月一日ヨリ大正六年七月十三日迄ノ間ニ於テ、数回ニ原告ハ被告ヨリ赤堀改修及ビ高谷堀改修其他七カ所ノ工事ヲ金六千八百九拾九円七拾銭ニテ請負ヒ契約ヲナシ、大正六年八月二十八日右土事ヲ完了シタリ、而シテ右工事金の内数回ニ金六千四百七拾弐円八拾六銭ヲ受領シタレトモ、残金四百弐拾六円九拾参銭ハ数回督促スルモ支払ハズ仍テ本件ニ於テ之ガ支払ヒヲ要求ス
二	原告ハ被告ヨリ同上増工事ヲ金千六百拾四円四拾四銭ニテ請負ヒ、是又同ジク大正六年八月二十八日工事完了シタレドモ之ガ代金支払ヒヲナサズ、仍テ本件ニ於テ之ガ支払ヒヲ請求ス
三	原告ハ右工事ヲ請負ヒタルニヨリ之ガ保証金六百九拾七円也ヲ原告ヨリ被告二差入レタり、而シテ該工事ハ前記ノ如ク大正六年八月二十八日完了シタルニヨリ右保証金ハ当然被告ヨリ原告ニ返還スヘキ次第ニ有之候、尤モ其内弐百九拾七円ハ返還シタレトモ残金四百円也ハ之ガ返還ヲナサズ、仍テ本訴二於テ之ガ請求ヲナス次第ニ候
四	本件訴状送達ノ日ヨリ右三口ノ金額ニ対シ法定利率ノ年五分ノ割合ノ損害金ヲ請求ス

　　立証
一 口頭弁論ノ際立証可仕候