北本市史 資料編 近代

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第2章 産業・経済

第2節 近代産業の発展

5 石戸トマト

145 昭和二年(一九二七)六月 トマト栽培要項 石戸トマトクリー厶販売組合
  (中丸 加藤一男家文書三七)
  トマト栽培要項(石戸トマトクリーム販売組合)
 一 裁培品種
▲ポンデローザ 蔓性の晩生種、葉は中形で欠刻あり、果は暗赤色で大きく扁円、不整形、一個八十夂乃至百夂位を普通とし、大なるは二百知に達するものがある。
▲リビングストン・グローブ 蔓性の中生種、葵葉の繁茂比較的少く、葉は大形で欠刻あり、果は淡紅色で正球形、大さ中位で一個五十夂位。
▲ミカド 蔓性の中生種、果は朱赤色で扁円、不整形、大さ中位で一個五十匆内外。
▲クリムソン・カッション 蔓性の晩生種、茎葉粗大、果は濃朱色で扁円形不整、稍大形で一個六十父内外。
▲キングストン 蔓性の晩生種で、果は前記クリムソン・カッションに似てゐる。
▲ドワーフ・ストーン 矮性の早生種、葉は濃緑色で極大きく欠刻少く、果は赤色の丸形で一個二十知乃至二十五夂位。
 二 位置及土質
連作を嫌ふこと甚しいから、一度栽培した畑には少くも四年を経なくては作らぬがよい。土質は余り選ばない方だが、適度の湿気ある壌土又は砂質壌土がよく、本村の大部分の土質は先づ好適すると言ってよい。
 三 本畑の肥料及土寄
一般に窒素質肥料の過用は、茎葉繁茂に失し落果が多くなり易い。一例を挙げると、反当元肥として堆肥三百貫、人糞尿百五十貫、藁灰十五貫、強過燐酸石灰五貫。
追肥として植付から二十日位後に一回、その後更に二十日位後に一回、各人糞尿百五十貫を倍量に薄めて施し、併せて成るべく深く土寄を行ふ。土寄は一般に深い程成績がよい。
 四 植付
草丈六七寸、本葉六枚位のものが定植に適する。畦幅三尺、株間二尺としー畝歩百八十本の苗を要する。但し之は後記整枝法に詳しくあるが二本仕立とする場合の株間で、一本仕立とする場合は株間一尺とし、一畝歩三百六十本の苗を要する。強雨中又は強雨直後で土のべとついてゐる時植えるのは甚だ悪い。植込は深植を可とし、本葉一枚目の下まで土が掛る様にする。
 五 整枝
普通のトマトは本葉七枚目乃至九枚目の節間に初花を生じ、其後三四枚毎に花を着け、各葉腋から盛んに枝を出し、放任せば枝葉徒らに繁茂して落果多く果が着かなくなる。整枝法にいろ<あるが、株間二尺のものは二本仕立とする。即ち幹と初花直下の枝一本と二本だけにして、その他の枝は若い間に皆摘み捨てる。また株間一尺の場合は 一本仕立、 即ち主幹だけを伸長させ側枝は出次第全部摘除する。
 六 支柱
蔓性種には必ず支柱を要し、蔓を之に導き、打藁で処々縛ってやる。矮性種でも支柱を用ひた方がよい。支柱は整枝の幹一本毎に立てるので、即ち一株二本、一畝三百六十本を要する。二畦宛抱き合せにして縄で結び合せると風に負けない。また、支柱の代りに三尺位に一本宛丈夫な竹を立て、之に三条の縄を張って、蔓を之に導いてもよい。
 七 芽搔き
整枝の項で述べたやうに、各葉腋から芽を生じて盛んに繁茂する性質があり、放任せば陽光の透射と通風を妨げ、結果後れ且つ落果が多く、病害が発生し易いから、所要の蔓以外は総て芽を搔き取ることを怠ってはならぬ。芽搔きを怠ったらトマトは取れないと思ふべきである。また花序即ち花枝の先端が往々葉となるものあるから、この葉も摘み去るがよい。
 八 収穫
トマトクリーム製造用としても、またそれから種子を採るにも、蒂のきわまで色づき次第収穫したものが撮もよい。この時期を過すと、果に傷みが入ったり、自然に落果したりするので、過熟は甚だ悪い。また、収穫したら成るべく早く組合に搬入するがよい。

  石戸トマトクリーム販売組合トマト競作会規程
  第一章 総則
第一条本会ハ石戸トマトクリ—ム販売組合員トマト栽培ノ改良向上ヲ図ルヲ以テ目的トス
第二条本会事務所ヲ組合事務所内ニ置ク
第三条本会々長ハ組合長ヲ以テ之ニ充ツ
第四条本会ノ出品ハ組合トマト栽培者ノトマト畑全部トス
 組合ノ栽培申込書ヲ以テ本会ノ出品申込書卜見做ス
  第二章 審査
第五条出品人ハ審査ニ就キテ異議ヲ申立ツルコトヲ得ズ
第六条審査ヲ行フ為審査長一名審査員四名ヲ置ク審査長ハ本県農事試験場ヨリ之ガ派遣ヲ請フ
 審査員ノ内一名ハ本部農会ヨリ派遣ヲ請ヒ三名ハ組合技術員ヲ以テ之ニ充ツ
第七条審査ハ八百点ヲ以テ満点トシ其附点標準次ノ如シ
 栽培面積百 点一反歩以上ヲ満点トシ一反歩未満ハ一畝ニ付十点トス
 管  理百 点内訳植付十点、中耕除草三十点、芽搔三十点、支柱立三十点
 生育状況百 点数回ニ審査ス
 反当収量三百点組合二搬入セル数量ニ依リテ改算シ最高収量ヲ満点トシ五貫ヲ減ズル毎ニ一点ヲ減ズ
 果ノ品質二百点搬入品及圃場生果二就キテ審査ス
  第三章
第八条審査合計点数ニ依リ左ノ通り擬賞ス
 特等賞出品総点数ノ百分ノ一内外
 一等賞同     百分ノ三内外
 二等賞同     百分ノ六内外
 三等賞同     百分ノ十内外
 褒 状同     百分ノ三十内外
     (昭和二年六月)

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