北本市史 資料編 近代
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第4章 社会生活と文化
第3節 解脱会
323 昭和十年(一九三五)五月 解脱会春季例祭
(解脱会本部蔵)
五月晴れの日
春季例祭
若葉薫る本宿霊地
(岸田記)
待ちに待たれた此の日、未明の空を眺むればどんよりと曇った東天はほのかに白んで居た。必ず今日は天気になると信ずる人々等く雲は次第にと切れて、五月の空はゆくりなく晴れ渡った午前六時三十分頃家を出て急ぎ上野駅へ到着して見れば既に本部の方々は見えられて居た。午前八時半の集合時問を目指して者集り来る陸続と相次いで駅前はさながら解脱会員等にて洪水の如き有様、刻々と迫る出発時間を気にしつゝ各支部共、申込人員数調査に大童、漸くにして一同乗り込み終り、警笛一声を合図として連結十二両の特別仕立列車は延々長蛇の如く動き出した忽ちにして東京を離れて数分、ごうごうたる響音に気が付けば今や列車は東京と埼玉の境をなす荒川鉄橋を驀進して居るのだ。真下に見ゆる流れは悠々として急がず、河原の若草は陽春の中に萌え切って居る。またゝく間に各駅に無停車通過して列車は大宮に着く、此処に鎮座まします関東一ノ宮氷川大神様にー同車中より御挨拶を申し上げ終れば列車は更に躍進を続ける。本宿に近付くに従って四囲の風光悉く清く畑に山に清新気満ち満ちて自らなる神々しさを感じる午前十時二十分無事北本宿前に着く駅前には既に土地の人々等多勢参集出迎でむかへられた。此処ここにて直たゞちに予定よていの隊伍たいごに依より五本ほんよりなる五色しきの大幟おおのぼりを各部かくぶの先頭せんとうに押おし立たてて、延々長蛇えんえんちょうだの如ごとき行列ぎょうれつは一本松いっぽんまつに向むかって出発しゅっぱつする。更さらに各支部奉納かくしぶほうのうの五色しきの旗はたは一段いちだんと行列ぎょうれつを賑にぎはせた。たまたま打上うちあがる花火はなびは晴はれ渡わたった五月がつの大空おおぞらへ思おもひ切きり大おおききな音おとを立たてては人々ひとびとの耳みゝを驚おどろかせた。より以上いじょうに皆みな一斉せいに驚おどろいた事ごとは新あたらしく出来できた参道さんどうの偉容ゐようさ偉大ゐだいおもrt>なる門柱もんちゅうを過すぎぎれば参道さんどうの木々きぎは一入込緑しほしんりょくを増まして此この大祭だいさいを喜よろこぶが如ごとく見みゆる進すすむ事ごと二丁余牛込田中氏奉ようしごめたなかしほうのうの大鳥居おほとりゐの辺あたりより各人々奉納かくひとびとほうのうの旗はたも賑にぎはしく山やまなす人々ひとびとの間あひだを抜ぬけて漸やうやく御参拝ごさんぱいを済すませ、行列ぎょうれつは会長先生御本家かいちょうせんせいごほんけへ向むかって行進こうしんする御本家ごほんけにて甘酒あまざけその他たの御變応ごけおうを受うけ再ふたたび行進こうしんして氏神天神社境内うじがみてんじんじゃけいだいに進すすむ鎮座ちんざまします各神々かかみがみに御参拝ごさんぱいを終おわり、会長先生かいちやうせんせいの貴たうとき御講演ごこうえんを拝聴はいちやうさせて頂いただきき恵めぐまれるまゝに心こころゆくばかりの昼食祝宴ちゅうしょくしゅくえんを開ひらく、舞まふ者歌ものうたふ者もの、限かぎりなく心こころから解脱げだつの道みちにある者ものの朗ほがらかさが現あらわれて居ゐた昼食ちゅうしょくを終おわる頃ころより霊祭大供養れいさいだいくやうが盛大せいだいに行おこなはれた総すべてを終おわって午後六時頃北本宿駅ごごろくじごろきたもとぢゆくえきに集合しゆうごう六時じ廿分土地ぶんとちの人々多数歓呼ひとびとたすうかんこの中なかを帰途ぎとに着つく
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