北本市史 資料編 現代

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第2章 北本の農業

第2節 統制経済と供出制度

60 昭和二十三(一九四八)年十一月 別所、代用食で完納申合せ
  (『埼玉新聞』昭二三・一一・二四)
  減収にメゲズ代用食でも完納申合せ
北本宿村別所 ◇ 北足立郡北本宿村旧中丸村別所では昨年に続き再度米作の被害にあうという悲境にめげず、丗九農家が一体となり農魂一番、停電時にローソクをつけ脱穀機を踏む意気込みで事前割当を前に一路完納へと涙ぐましい努力を続けている。
◇・・・別所は約廿三町歩の水田だが、昨年米の収穫期に当ってカサリン台風の余波で元荒川の決壊に堪水の被害を被ったが責任感強い別所民は、他村よりのヤミ買いで立派に完納の成績をおさめたという経験から、今年は立派な収穫をあげようと田植以後肥培管理に造詣の深い農協組同支部長三橋伊左衛門さんの指導下に肥料不足をおして田に力を打ちこんだ。
◇・・・第四班の金子八五郎さんの如きは毎日朝起きるとまず田の見回りを行い、雨の日、風の日もかゝさなかったなどその例である。しかし自然の魔力はこれらの努力にもかゝわらず地質の悪い同地で泥害による病虫の発生に見舞われ、収穫期にあたって一反当一俵の極端な見込減という結果になった、この落胆ぶりを知った別所の内田柳之助氏はたまたま神経痛の病床にあったが、村会議長という指導的立場にあるのを痛感、一日全員を集め現下の食糧事情から悪条件を克服しての供出完遂を力説した。
◇・・・この言葉に奪(奮カ)い立った別所農民は「よしそれでは十二月の目標日までは是非完納しよう」と寄々協議の結果①当然割当が保有米までくいこむことが予想されるのでこの際麦を利用、供出米を一粒でも浮ばせる②別所がー致して分け合ってくう、という悲壮な決意を固め、さる十四日刈入れも終了、今完納へ懸命の脱こくを続けているが、最近の電力事情で電力も思うにまかせずはかどらぬと節電時には足踏みの脱穀機をも引出して作業をすすめ、別所伝統の強い責任感(観)念のおう盛さを如実にしめしている。

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