北本市史 民俗編 民俗編一覧

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第1章 生活の場と民俗概観

第4節 民族とは何か ―民族知識を例として―

産育に関するもの
便所神さんといって、便所をきれいにしているとお産が軽い。
こどもが生まれると、ウブタテメシを炊き釜の蓋に盛って竈神様に供える。
生後三日目(あるいは七日目)にセッチン(雪隠)参りをする。竈神様、井戸神様に連れて行くところもある。
箒やサンダワラはまたぐものではない。産が重くなる。
後産がおりない時は、座敷箒で背中をなでてやるとよい。
産着は縫っておくものではない。生まれた後で縫うものである。
名付けは、紙に三つぐらい書いて升にいれ神棚に上げておき、かきまわしてついてきたのに決めた。
お七夜前は血ブクで、産婦は神様に手を合わせてはいけない。
二十一日間はお天道様に当たるのを避けた。おしめ干しなどで外にでるときは笠をかぶって出た。
初誕生には、誕生餅をつく。誕生前に歩く子供には、一升餅を背負わせる。
妊婦は、柿、秋茄子、梅干し、油こい物を食べてはいけない。
死人の夢をみると、子どもが生まれる。
十月歯は塔婆にたつといって子どもを氏神様に捨て、懇意な人の拾い子にした。
火事の時、古稀の祝いに貰った火吹き竹で吹くと、類焼を免れる。
産育に便所神・竈神・井戸神などが関わるという俗信は、広く行われている。箒などの招魂の呪具を、産婦はまたいではならないのである。
命名には、神の意志をうかがおうと努める。
出血を伴うお産は、けがれとして意識されていた。従ってけがれが晴れるまでは、神前に出たり太陽に当たるのを避けた。
孫は祖父・祖母の生まれかわりだというが、死や葬式を連想させることは忌んだ。大事な子供が育ちにくい時、わざと大事ではないふりをして、悪霊の注意をそらそうとしたのである。

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