北本市史 民俗編 民俗編一覧

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第1章 生活の場と民俗概観

第4節 民族とは何か ―民族知識を例として―

衣服・食物・住居に関するもの
子供の育ちが悪いときは、百軒の家から布を貰って、それをはいで着物を作って着せると丈夫に育つ。
一つの着物を大勢で縫ってはいけない。
着物をさかさに持って振ってはいけない。
巳・寅の日には、着物を裁ってはならない。
新しい着物を夜おろしてはいけない。
櫛を拾うとよくない。
お竈様の供物は、娘には食べさせない。
恵比寿様の供物は、娘には食べさせない。縁遠くなる。
忌中一年間は、屋根の修理をしてはいけない。
屋根裏に登るときも、家の神棚の上に登ってはいけない。
子供が火わるさをすると、寝小便をする。
井戸のなかに金物を落とすと、病気になる。
井戸掘り中、女が覗くとよくない。
井戸を埋める時は、息つきに竹を立てて埋める。
ものもらいができたら、井戸神様に目籠を半分見せる。
便所ヘツバキをすると、歯がいたくなる。
衣服は体を包むだけでなく、魂の入れ物として意識されている。従って、種々の俗信を伴っている。
最初の例は子どもの育ちの悪いのは悪霊の仕業と考えて、大勢の力を結集して対抗しようというのである。
葬送習俗からくる禁忌も多い。普段は、葬式の時の作法を避ける。
櫛など頭に使用するものには特別の関心を寄せ、粗末にしたり、拾って使うことを忌む。
食物は神様への供物であり、生命維持の活力の源でもある。食物に関する俗信も多い。
竈神・恵比寿様など家の神の供物は、将来他家の家の神を祭る主婦となる娘には、食べさせないのであろう。
囲炉裏には火の神が、井戸には井戸神様(水神)がいる。便所も厠と言うとおり水神が支配していると考えられていた。それらの神々に失礼にあたることはしてはならないのである。
一面では、これらの俗信を利用して子供のしつけを行った側面も見逃せない。
水神は金気を嫌われるというのは、一般的な民俗である。
目の病は水神が直してくれると考え、目の多い目籠を半分見せて直してくれたら全部見せると誘っているのであろう。

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