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第11章 伝説・世間話・昔話・諺

第1節 伝説

10 かんねづか
      下石戸下
a 下石戸下の向郷(むけいごう)に、「かんねづか」という場所がある。桶川~松山線の石見屋の所の信号から桶川の方に向かい、大蔵寺を過ぎ、坂を下り始める所の西側辺りをいう。
  ▽話者・・・・・・・新井恒治さん(高尾大正十五年生)

b かんね塚は、鉦塚か鉦音塚であろう。かんね塚には一つの物語がある。「ヤツノウシロンチ」に伝わる話である。
「昔、昔、その昔、道端の藪の中で一人の老人が念仏を唱えながら鉦を叩いていた。幾日も、幾日も、それが続いた。近所の人は食物を運んで与えたが食べようとせず死を覚悟してるようだった。鉦の音は夜になってもやまず、風に乗って響き渡った。近くの家の人はその音を聞き寒さを覚えもの悲しく感じた。かくて鉦の音はとだえ勝ちになり、遂にプッツリと消えた。その後通りかかった人がのぞいてみると往生していた」と。
このことから察すると「かんね塚」は一種の入定塚(にゅうじょうづか)と見られる。
  ▽伊藤幸作「原の生態」謄写刷昭和五十年ごろ

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