北本市史 民俗編 民俗編一覧

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第11章 伝説・世間話・昔話・諺

第1節 伝説

29 病を治してくれる神仏
「風邪」を治してくれる神仏には、深井七丁目の磯崎英信さんの屋敷の西隅に祭られていた住吉神社がある。「シャビキバア」 「シャジキ婆あ様」(「しわぶき婆あ」である)「シャブキ稲荷」と呼ばれていた。この神様は、赤ん坊の風邪を治してくれるので、深井はもちろん常光(鴻巣市)の上谷、下谷あたりからも来た。お願いするときはおさい銭をあげ、治ると白い(米の)団子をあげた。昭和四十年ぐらいまではお参りに来る人がいた。
ニッ家の「おしゃもじ様」は、奉納されている「しゃもじ」を借りてきてご飯をもって食べる。治ったら、新しいおしゃもじを返す。北中丸の小川栄一家のオクマン様(熊野神社)も、百日咳などの風邪を治してくれる。治ってから、こうせん(麦こがし)をあげに来た人がいた。

写真4 おしゃもじ様(下石戸下)

「夜泣き」を治してくれる神仏には、常光別所の吉田金次郎家の稲荷、北中丸の加藤茂家の稲荷、宮内の「登戸(のぼっと)稲荷」、下石戸下の小川文夫家の稲荷などがある。いずれも、子供が夜泣きをして困ったときには、お願いするとき、または泣きやんだとき、豆腐、油揚げを稲荷様にあげた。
「足の病」を治してくれる神仏には、常光別所の三橋長次家の氏神様である「子の権現様」、荒井の須賀神社入口わきにある小祠、二つ家の集会所の入口にあるおシャクジ様などがある。前二者はワラジをあげてお願いをした。おシャクジ様には、今日、サンダル、スリッパなどが納められている。
「耳の病」(耳だれ・中耳炎のこと)を治してくれる神仏には、「首から不動」などと呼ばれている下石戸上の俱利加羅不動、北中丸の安養院入口わきの聖観音などがある、「お水」を竹筒に入れていただいてきて、耳につけた。
「目の病」を治してくれる神仏としては、石戸宿天神社の御神木。これは木の根に溜る雨水を眼につけると眼の病気が治った。北中丸の太子堂の薬師様。治ったら団子を五つあげた。深井の薬師堂には、「め」の字が書かれた絵馬が、かっては多数納められていた。北中丸の「道陸神の薬師様」も、目の悪い人の厚い信仰をえていた。二里四方からやってきた。
「いぼ」をとってくれる神仏としては、高尾の氷川様から荒井橋へ向かう途中にある万人講中の地蔵様。泥団子をあげ願をかけ、治ったら白い(米の)団子をあげた。深井の薬師堂の入口を入るとすぐ左手に「いぼじぞう様」がある。お地蔵様の頭をなぜながら、いぼを取って下さい、とお願いする。その他、宮内の吉沢信吉家にある観音様、下石戸下台原のいぼ神様、下石戸下の大蔵寺入口の石地蔵などがある。
「下の病」を治してくれる荒井の山王神社には、安産と下の病の治癒祈願に、比企郡方面からも来た。
「かさ(瘡)」を治してくれる神仏としては、荒井の川ロ欣計家の「笠森稲荷」、下石戸下の五味賢二家の稲荷社、常光別所の吉田金次郎家の「カサカキ稲荷」、深井の薬師堂の裏にあった「すりばち稲荷」などがある。

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