北本市史 民俗編 民俗編一覧

全般 >> 北本市史 >> 民俗編 >> 民俗編一覧

第11章 伝説・世間話・昔話・諺

第1節 伝説

42 十日夜(とうかんや)
旧十月十日は、トオカンヤと言い「犬の供養の日」であると言う。
弘法大師が支那(中国)に行ったとき、初めて、麦というものを見た。農家の庭のむしろに麦の種子があったのである。あまりにもめずらしい物を見たので、つい悪いことと知りながら、ちょいとひとつかみ盗み、竹の杖を持っていたので杖の上の方にその種子を入れ、知らん顔して立ちさろうとした。そのとき突然犬が吠え出してやまない。飼い主が出てきて、「もし旅の方、何か悪いことをしたのではないか。」といわれた。「いや、何もしない。」と言い張ったところ飼い主はその犬を棒で打ち殺してしまい、「旅の方、何もしていないのにあなたを疑って悪かった。犬を殺してしまったから勘弁して下さい。」といって謝つたという。
その時盗んだ麦種子が、犬の命と引き替えに日本の麦となったという。その犬の供養のために十日夜にはボタモチを作り供えるのだという。
  ▽田島和治「河岸の年中行事」

<< 前のページに戻る