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第3章 農業と川漁

はじめに
この章では昔から続けられてきた畑作や稲作の姿、養蚕、荒川などでの漁、さらに山野に生息する動物を捕る狩猟の様子を記していく。
昭和三十年代半ば以降の高度経済成長によって人々の生産活動のあり方や生活様式は大きく変わり、今や専業農家はごくわずかとなり、元から北本に住む家々も大半が第二種兼業農家で、農業をやめた家も多い。昭和二十五年には農家が一ニ一五戸あり、うち専業農家は七二八戸、兼業農家のなかの第二種兼業は一五三戸だったのが、昭和六十年には農家数が八五三戸、うち専業農家が九一戸、第二種兼業が六二一戸となっている。おそらく昭和初期までは、北本に住むほとんどの家が農業に携わっていたのが、今や農家は少なく、しかも戦後からわずか三五年程の間に農家数は七割に減じ、専業農家は約八分の一になっている。
一方、耕地のあり方をみると、明治八年の『武蔵国郡村誌』に記された耕地総面積は約一〇五七ヘクタールで、昭和二十五年の一〇九八ヘクタールと大差ない。しかし、昭和六十年には六三三ヘクタールと半分近くに減っている。会社・工場などの進出と宅地化の進行によって大きく変貌しているのがこの数値だけからもうかがえ、さらに現在はこの傾向がなお進んでいるといえる。
まさに古くから続けられてきた伝統的な生産活動は大きく変貌し、昔ながらの農業、養蚕、川漁、狩猟は姿をとどめていないということもできる。この章では以上のような変化を実際に体験してきた古老からの聞書き資料やいくつかの記録資料をもとに、昭和初期を目安に畑作・稲作等の具体的な方法などを復元し、さらにそれらの移り変わりについて記しておくことにする。

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