北本市史 民俗編 民俗編一覧

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第3章 農業と川漁

第1節 畑と畑作物

3 畑作の過程

(四)サツマイモ
苗 床
サツマイモの苗床作りは、早い家では十二月か一月に始めた。北本では戦後まで正月は月遅れで二月にしていたので、感覚的には暮れまでに苗床を用意したことになる。種芋を伏せるのは三月の彼岸ころで、これまでに苗床を用意すればいいのだが、山の落葉や藁屑などを入れ、腐らせて床土とするので、サツマイモをたくさん作る家ではどうしても早めに苗床を用意した。
苗床の場所は、家の庭の日当りの良いところが一般的で、ここに幅六尺に長さが七、八間、あるいは幅二間に長さが一〇間などという具合いに苗の必要量や庭の広さに合わせて作った。床を作るには、四隅やその間に杭を打って竹を渡し、小麦カラで囲った。この中に大麦カラや稲藁のすぐり屑を入れ、その上に山から搔いてきたクズ(落葉)を入れる。さらにコヌカを入れて下肥をかけ、二、三寸の厚さに腐葉土(ふようど)や堆肥をかぶせる。

写真13 サツマ苗とり

(苗床から苗を切り、籠に入れる 荒井)

コヌカや下肥をかけ、しばらくすると中に入れたものが発酵して熱を持つ。熱は高すぎても低すぎてもだめで、彼岸ころに適切な温度になるように作るのである。温度が低すぎると苗の伸びが悪く、高すぎると種芋がふけてしまう。種芋は遅植えの中から選んだり、普通に植えた中から小さなイモを選んだ。できるだけ水分の少ない畑のイモが良く、九月末から霜が降り始める十月初めに掘ってサツマムロ (モロ)に保存しておいた。サツマイモを一町歩作るには、種芋は二〇俵(一依は一四貫、後に一二貫)必要だという。
種芋は苗床に指一本くらいの間隔で植え、上に小麦のヌカをかけ、寒いと藁ものせて萱(かや)の菰(こも)をかぶせた。種芋の伏せ方は、イモを並べて上から堆肥をかぶせたりもした。苗床の温度は摂氏三〇~四〇度くらいが良いという。温度は寒暖計を突き刺して計るが、慣れてくると指を差し込むだけでわかる。苗床が熱くなりすぎると水をかけてさますなど、温度には常に注意していなければ良い苗はできなかった。
北本ではこうして作ったサツマ苗を売る家もあった。苗を買い集めて新潟や東北地方に売る仲買商もいたし、鴻巣などのサツマ問屋でも扱った。

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