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第3章 農業と川漁

第1節 畑と畑作物

3 畑作の過程

(四)サツマイモ
貯  蔵
販売するイモは鮮度を保っため、ほとんどは掘るとすぐに俵詰めして出荷したが、自家用や種芋は十月中旬過ぎにムロ (モロ)に貯蔵して必要に応じて使った。ムロは地中に作った穴蔵のことで、これにはホンムロとオカムロがある。ホンムロは排水の良い、小高い場所につくるもので、地面に縦に穴を掘り、二間くらい掘り下げた所で今度は横三方に二、三間程の長さに掘った穴蔵である。人間が中に入って歩ける大きさで、サツマイモの他にショウガなども貯蔵している。
オカムロはホンムロのような常設の大がかりなものでなく、横に溝状に穴を掘って小麦カラを底と側面に並べ、サツマイモを入れ、上に小麦カラを載せて土をかぶせてしまうものである。幅は二尺五寸から三尺程度で、長さは作る場所や貯蔵するイモの量に合わせ、深さはニ~三尺くらいにした。空気穴として一間おきに竹や土管を立てるが、土をかけて埋めてしまうので貯蔵中のイモの状態を見ることはできない。
ム口にはこの二種があるが、ホンムロは、たとえば下石戸下では近くに適地がなく、加納や大石などにある親戚の土地を借りて作っていたなどといわれている。適地を探すのが簡単ではないのだが、これだと貯蔵したイモの状態をいつでも見られたし、取り出しも簡単である。これに対してオカムロは身近に作ることができるが、上の土を取り除いて開けないと取り出せず、また場所によってはイモが腐ってしまうこともあった。
どちらにも長所、短所があるわけだが、北本ではオカムロの方が多く、寒が明けるとムロを開けてイモの状態を確認した。ム口に貯蔵するサツマイモは、蔓に付けたままで一貫目くらいずつ束ね、さらにこれを三・四把たばねて入れた。

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