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第3章 農業と川漁

第2節 水田と稲作

3 稲作の過程

(二)植 え 田
苗 代
苗代を作る田は、できるだけ水の掛け引きができる条件のよい所を選んだ。たとえば北中丸では、苗代は西の田に作り、梅沢排水の水を堰(せき)止めて引いて使ったという。家に近いことも条件の一つで、なかなか条件を満たす場所は少なかったが、植え田への転換期には、岡苗代といって畑に苗代を作ったので、水田での苗代作りの経験がない人もいる。ただし、岡苗代はイモチ病に弱いということで行う人は多くなかったといわれている。また、植え田になってから一時早植えがはやり、苗代に油紙を張る保温折衷苗代も行われた。
水田の苗代は水苗代と呼ばれ、この田は摘み田と同じように田うない、代搔きをして土を盛り上げて短冊を作った。短冊の幅は三尺あるいは四尺で、六間とか一〇間など長さは田の大きさにあわせた。一反分の苗を作るのに必要な種籾は四升ほどで、一週間から一〇日くらい水に漬けた種籾を蒔いた。

写真23 水苗代の種蒔き

(土を盛りあげてないが短冊になるように蒔いている 常光別所)

種蒔はちょうど摘み田の田摘みの時期で、苗代田の水を抜いて短冊に水がかかってないようにしてから蒔き、その上を木の板で撫(な)でる。撫でるのは種籾を土の中に落ち着かせるために行い、さらに上からフルイにかけた灰を振るいかけ、水をかける。こうしておくと種籾を雀に啄まれずにすみ、水をかけたままにして芽を出し始めたら一度水を切り、その後再び水を入れる。苗代では種蒔きの後、入念な水の掛け引きが行われるのである。この点は摘み田の田摘み後と大差ないが、苗代の方が面積が少ないだけに行いやすかった。

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