北本市史 民俗編 民俗編一覧

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第3章 農業と川漁

第4節 養蚕と桑苗生産

4 桑園の管理

桑の改植
こうしで手入れを欠かさぬ桑だが、養蚕用の桑としての寿命は植えて二〇年と言われる。植えて三、四年目から一〇年くらいが樹勢の盛りの時期で、それ以後は枝条が大きくなって作業がしずらくなる。一〇年から一五年で改植(かいしょく)すれば良いのだが、一五~二〇年位にはどうしてもなってしまった。改植にさいして、抜かれた古株は、養蚕農家の貴重な燃料となった。
改植の時期は春秋二回あり、秋植えは十一月~十二月、春植えは三月~四月上旬であった。しかし春植えというのは、労働力の関係で秋に植えられなかったもので、秋に苗の束をほどいて仮植えしておき、春に植え直すのである。改植する苗木は、自家で作ることもでき、そうした養蚕農家もあったが、多くは苗木屋(桑苗生産者)より買い取っていた。桑苗は北本市域でも盛んに生産され、花ノ木、古市場、別所にそうした生産者がいたのだが、昭和五十年ころにはその生産をする者もいなくなったので、石戸宿での現在の養蚕農家は、桶川の川田谷、加納で生産される苗木を組合を通して買い求めている。
改植の単位は畑一枚ずつであるが、萎縮病(いしゅくびょう)にかかるなどで使えなくなる桑が毎年出る分は、その都度一株ずつ補植していた。そして、植えるに際しては、まず植え込む穴に肥、大豆粕、魚粕などの肥料が入れられる。それに土をかけた上に苗木を植えた。
桑園の害虫であるシャクトリ虫は、色が桑の木に似ているので見分けにくい。しかし、これは新芽を喰うので、冬の間藁で束ねておいた枝を、春に解くときに取り除くようにした。

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