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第3章 農業と川漁

第5節 労働と休日

1 労働慣行

アサヅクリとヨナベ
農家では春から夏にかけてはアサヅクリを行い、秋から冬にかけてはヨナべをしていた。アサヅクリというのは朝飯前にひと仕事行うことで、摘み田の田摘みの時には田にウネヒキで筋を引いたり、種籾と堆肥や灰を混ぜたりしたし、サツマイモの掘り取りや麦蒔きの準備もアサヅクリに行うのが普通だった。
夏の暑い季節には、日中には仕事ができないので、アサヅクリに畑の草むしりやサク切り、田の草取りなどを行い、昼飯後には昼寝をして体をやすめた。
ヨナべは晩御飯を食べた後の仕事で、秋には稲の籾すりをした。日中に選別した籾を莚に広げて干し、その後で籾すりをするので、どうしてもヨナベ仕事となったのである。籾すりが一段落すると、ヨナべに藁仕事を始めた。日暮れが早いので、明るいうちは畑の仕事や山搔きなどを行い、暗くなると藁仕事となったのである。
藁仕事をする時期は農作業が暇な時で、一年間に必要となる藁製品をできるだけ揃えた。十一月中旬から翌年の三月ころまでがヨナベの季節で、おおよそ年明けから三月ころまで藁仕事をしていた。縄ない、米や麦を入れる俵、ゾウリやワラジ、テゴッタワラ、莚、蚕のマブシなどを作る仕事で、七時ころに夕飯を食べて一〇時、一一時ころまでランプをともして行った。遅くなった時には腹が減るので夜食を食べることもあった。
また、女はヨナベ仕事には繕いなどの針仕事をしたり、機織りもしていた。女は男の袴(はかま)が縫えると一人前だとか、冬場の暇な時期には朝から機織りをすることもあったので、一日に一疋(ぴき)(二反)織れると一人前だといわれていた。古くは賃機といい、機屋から仕事を請(う)けて機織りをしてお金を貰うこともさかんだった。

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