北本市史 民俗編 民俗編一覧

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第3章 農業と川漁

第5節 労働と休日

2 休日と農耕儀礼

ウエアゲ・サナブリ
これは植え田にともなう儀礼で、田植えが終ると各家ごとに行われる。市内ではウエアゲ、あるいはウエキリと呼ぶのが一般的で、サナブリというのは高尾・荒井などでいわれている。ただし、高尾などでは「サナブリ」は田場所(水田地帯)の言い方で、この辺りでは使わなかったという人もあり、必ずしも一般的とはいえないようである。

写真37 オカマサマ

(下にカマドがある 荒井)

ウエアゲは、田植えが終ってから稲苗を持ち帰り、オカマサマ(荒神様)にボタモチとともに供える儀礼である。内容は各地区とも大差ないが、オカマサマに供える稲苗は、単に一把とか、一〇本ぐらい、あるいは各植え手の手に最後に残った苗を集めて二~三把に束ねてなど、家によって少しずつ違っている。丁寧に行う伝承では、田植えは最後に苗代を行い、ここに植えた一ニ株の稲株から苗を少しずつ抜き取って一把にし、これをオカマサマの棚に供えたという。
ウエアゲに作る食べ物は、「ウエアゲのボタモチ」という言い方があるように、ボタモチ(糯米を炊いて握り、小豆の餡(あん)をまわりに付けたもの)が普通だが、ウドンを打つ家もあった。
なお、埼玉県内では田植え終了後には、ウエアゲとは別にサナブリ正月などといい、ムラで日を決めて仕事を休むところがあるが、北本ではこうした儀礼はなかったようである。前に述べたように摘み田終了後にはノアガリが定められているのに対し、植え田後にはムラの休日がないのは、市内では植え田が新しい稲作法だからである。

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