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第3章 農業と川漁

第6節 川漁と狩猟

1 川漁

(1) 網漁
マチアミ
マチアミ(待網)は、通常は用水堀で行い、春秋の荒川の増水時には、下る魚を待ち受けて獲る漁法であった。春に増水した時はコイやフナが沢山とれたという。
マチアミの構造は、図11のように長さ三.五メートルほどの二本の竹と網で作られた。二本の竹を、元の方を合わせて縄で縛り、先端を二メートルほど開き、その間に袋状の網をつけたものである。二本の竹は先を開いた状態で固定するため、竹を合わせて縄で縛った所から六〇センチ程の所に四~五〇センチの横木を渡し縛り止めておく。網目は網口が約一寸目で、奥は細かく五分目ほどにする。麻糸で自分で編んだものだという。マチアミの使用法は、下る魚を網口を川上に向けて待ち受けるのではなく、流れの加減で魚が物陰にまわり込むような所で、川下に網口を向けて魚を待ち受けた。そのような場所は岸が川へ突き出て、陰によどみが出来ており、流水はそこで岸に向けて巻き込んでいる。増水で下ってきた魚はそこに回り込み、隠れるような習性があり、それを待ち受けたのである。自然の地形で、適当な場所がない場合、図のように障害物を岸から突き出し、流れが巻き込むような状況を作る。障害物は岸から一.五メートルほど杭を打って作り、杭の先から川上の岸に向けて針金や綱を張って補強しておく。これは冬の間に作られた。こうした場所に網を入れ、下になる竹竿の先を川底にさし、手もとは岸の杭に立て掛け、魚が入るのを待つ。マチアミの袋の先には二~三ミリの太さのミヤクイト(脈糸)が二本結ばれている。その糸の先を指のあいだに挟(はさ)み、網に入った魚の当り(振動)を感じ取り、網を上げ魚を取り込む。

図11 マチアミ

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