北本市史 民俗編 民俗編一覧

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第6章 衣・食・住

第1節 衣生活

5 仕事着

若いお嫁さんの野良着姿
嫁入りして数年のお嫁さんの野良着姿は、それはそれはきれいなものだった。さらしの肌襦袢に絣のジュバン、紺のモモヒキ、または、絣の長着の裾をはしょり赤い腰まきだった。それに赤や肉色のタスキ、袋帯はお太鼓に結び帯揚げもした。頭には手ぬぐいをかぶり、もう一本の手ぬぐいはきちんと折ってジュバンの衿(えり)にかけ、端を帯にはさんだ。暑いときは肌襦袢を省くこともあった。ジュバンの袖口を五寸ほど折り返し、そこに白い布やレースをつけておしゃれをする人もいた。帯も毎日同じだと「あれ一本しか持って来なかったんか」と笑われるので何本も必要だった。道を歩く子どもまでが、「どこどこの嫁御のほうがきれいだ」などと言うくらいで嫁入りして四、五年は競争して田植えしたくをしたものだった。お太鼓は、子どもができるまでとか嫁入りして四、五年はとかいわれていたが、最低でも二年は結んだ。
深井に昭和三十七年に来たお嫁さんも、お姑さんに言われ、一年だけお太鼓を結んだ。絣のジュバンに帯とお太鼓が別々になってできている簡易带をし、絣のズボン式モンペをはいて田んぼに出た。お太鼓で仕事をするのは苦しく暑くて大変だった。もうそのころでは珍しい姿で、本人はとても恥ずかしかったという。

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