北本市史 民俗編 民俗編一覧

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第6章 衣・食・住

第3節 住居

2 母屋

屋根
市内の伝統的な民家の屋根は、クサブキ(茅葺など)の寄棟造りであった。県内にひろく分布する屋根の形である。今日、大きな瓦葺きの切妻屋根の家(平入り)もみられるが、これは明治時代の半ば以降からのもので、火災などにより瓦葺で再建されたものが多いようである。いずれも経済的に余裕のある家に限られていたようだ。

写真25 諏訪義忠氏宅(下石戸上)

写真26 小川春信氏宅(山中)

クサブキ屋根のフキグサ(葺き草)には、ヤマガヤ(山茅)、コムギガラ(小麦稈)ノガヤ(野茅。蘆、ヨシのこと)、ワラ(藁)などをつかった。
茅は不足気味のようだった。自家の山林を持つ家は、木の葉搔きに先立ち茅を刈り取り(十一〜十二月)、タナギ(屋根裏の物置)に每年積みこんでいく。屋根の全面を一度に葺きかえることはなかなか大変なことで、一面ずつ順次行われることが多かったようだ。茅講はあまり行われなかったようで、自家の山林を持たなかったような家では、茅はあまり使わず、小麦稈で葺く場合が多かった。茅は三〇年はもち、いたんだ部分にサシガヤ(差し茅。修復)ができるが、小麦桿の場合は十年くらいしかもたなかった。
屋根の一番高い所をグシ(棟)という。グシは平ぐし(半円瓦棟)が圧倒的に多く、茅の上に粘土を盛り、その上にグシ瓦という丸味のある瓦をかぶせてある。
グシ止めをした両端の妻の部分はフジナリ(富士の形)とか三角形に造るが、その中にミズカメ(水甕)の文字を入れるのが一般的であった。火難除けである。その他、寿の文字や家の姓もあった。
グシに小屋根をのせている家が目立つ。これはケムダシ・ケブダシ(煙出し)という。イロリやカマドの煙を排出するための小屋根である。山中の小川春信さん旧宅の屋根には、グシのすぐ下に三〇×六〇センチくらいの煙り出しの穴がついており、原初的な形をとどめていた。

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