北本市史 民俗編 民俗編一覧

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第7章 人の一生

第1節 産育

一人前の働き
むかしは、一人前の男になった資格は、重いものを担げるか、あるいは、一日にどれだけの仕事をこなせるかであった。たとえば、四斗俵を担げることや、エンガ・エングワという片足で踏みながら耕す道具を使って一日に畑を三畝ウナウ(耕作)ことができたとか、麦刈りを一人で幾らできれば一人前とか、クルリボウ(殻竿)を使って一人で一石(二俵半)の麦穂をたたけると一人前の仕事ができたとされた。また、女の人は、お針仕事や炊事ができれば、一人前といわれ、直ぐにでも嫁に行けるといわれていた。針仕事では、羽織や袴が縫えれば一人前。木綿機だと、一日五反が一人前の働きである。絹機では一日一反織るのは苦労で、一反が三丈として一丈半から二丈織るのがやっとであったという。高尾地区では、養蚕でいうとヒラヅケ一枚つまり、八貫目(三〇キログラム)の桑を朝から夜遅くまで、蚕に一日五、六回くれる仕事が女性の一人前であった。これらは、かなりきつい仕事であった。粟牡丹餅ができるようになったら一人前といわれたが、粟は、普通の米と違って直ぐに煮えてしまい、おまけに柔かくなってしまうので炊くのが難しかったという。

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