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第7章 人の一生

第2節 結婚

2 婚礼

荷送り
嫁の荷物を祝儀の前日か当日に送りこむ、この時二サイリヨウ(荷宰領)といって、荷送りの中心として隣りの人とか本分家の人などを頼む。ほかに近所の人などを荷引きとして頼む。近所の人が嫁入り道具を牛車などで運んでくれる。婿方では兄弟や本分家の人が立ち合う。そして簡単な肴を出して一杯飲ませ、御祝儀を持たせる。この役を荷引きと呼ぶ。嫁が婿の家に着く前に届けられたタンスなどの道具や晴れ着などは、裏の座敷や縁側にならべて客に見てもらう。嫁入り道具や着物を自慢することをハバニスルという。
二ッ家のYさんの嫁入りの荷物は御祝儀の前に良い日を選んで牛車で届けた。大きい欅の一枚戸の戸棚に夜具を入れて持ってきた。タンス・針坊主・下駄箱・鏡台とかを持ってきた。縮緬(ちりめん)や錦紗(きんしゃ)の江戸褄と年を取ってから着る江戸褄、胸に松竹梅模様の千代田とかの着物を持たせてくれた。農家に嫁に行くことが決まってから、嫁入りの際に持って行く野良着作りを、姉妹親戚の皆が手伝ってくれたり、祝いだと贈ってくれたりした。木綿絣の長い単衣物を五組、木綿の元禄袖のもの(畑仕事に着るものは裏が無い)を幾組か、苦労して方々で探してきたりしてやっとそろえた。東京の兄が買ってよこしたり、鴻巣の方の店から買ったりした。
高尾では嫁さんの行列と一緒に、大概嫁入りの荷物を持ち運びしたものだった。普通荷車一台で、タンス一棹とそれに入れる外出用の着物、仕事着も含めた普段用の着物、夜具一組二人分、ほかに鏡台・下駄箱・タライぐらいのものだった。なかでも百姓着だけはどんなに工面しても持って行かないわけにはいかなかった。御祝儀に出る必要のない親戚の者か、組合の者が荷物を引いて行った。今と違って昔はそんなにも嫁入り道具などには費用をかけなかった。御祝儀には近所の人が見物に寄るもので、どこそこの嫁さんは荷物を持って来ないでタンスは空つぼだとか言われるので、なるたけタンスはいっぱいにした。

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