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第7章 人の一生

第1節 産育

腹 帯
妊娠五か月目の戌の日に腹帯を締めるというのは、市域においても今でも行われている習俗である。しかし、親元から腹帯が贈られてくるのは、初めの子ぐらいで次男、次女以後は、自分で用意した。
妊婦は、妊娠五か月目の戌の日になると、実家から贈られた紅白の晒しを腹帯にして巻く。この時、トリアゲバアサンや産婆さんが「犬」の文字を帯に書いて巻いてくれた。また、明治から大正のころは、夫の六尺褌を使うこともあった。比企郡川島町の正直観音、鴻巣市箕田の山王様などにお参りをして安産の御守りを腹帯の中に入れることもあった。腹帯を巻くと産婆さんは、毎月二回ほど妊婦の様子をみにきた。腹帯をきつく巻いておなかが目立たぬようにするのは、胎児が育ち過ぎてお産の時難儀をしないためであったという。紅白の晒しを用いたり、帯に「犬」の文字を書き、安産の御守りをはさみ込んだり、夫の褌を使うといった具合に、そこには、呪術的要素があり、母体の安全と丈夫な子どもの出産を神に願ったものである。

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