北本市史 民俗編 民俗編一覧

全般 >> 北本市史 >> 民俗編 >> 民俗編一覧

第7章 人の一生

第1節 産育

出産後の始末
アカッコ(子ども)が生まれると、サンボロ (産襤褸)と呼ばれる着古した布で子どもの身体を拭く。
ヘソの緒は、手一握りのとこで麻紐などで結んだ。ヘソの緒は、一週間ほどすると固くなり、自然にとれる。とれたヘソの緒は、オシチヤ(お七夜)のとき半紙に塩、鰹節、米を添え、麻紐で箸に結び付けセッチンマイリ(雪隠参り)のとき、姑や産婆が便所のなるべく高いところへ、つるしたり、刺した。現在では桐箱に入れて箪笥の中に保存する。子どもが高熱のときなどは、ヘソの緒を煎じて飲ませるとよいともいわれるが、実際に飲ませたというのは少ない。
たいていの場合便所に納めたヘソの緒は、二、三年すると汚らしくなるので捨てたり、ネズミに齧(かじ)られ何時とはなしに忘れさられてしまったという。
後産は、エナ、イナ、ノチノモノといわれ、実家でお産しても持ち帰り、男の子と女の子では処理する場所が異なっていた。男の子は、トボグチ(玄関)の敷居の下に、女の子はセドグチ(勝手の出入口)の敷居の下に、共に夫や家のもの(男)が穴を掘って埋めるのがおおかたであった。なかには、先達(氷川神社の神主)に方角を見てもらい、屋敷のアキノカタ(明きの方)に父親が穴を掘って埋めた。ノチノモノと一緒に男の子には、筆と墨を、女の子は、針を入れる。これは手習いや針仕事が上手にできるようにとの願いが込められていた。また、処理した後に水をたっぷりかけると乳の出が良いとされた。むかしは、乳が出ないと姑に毒なものを食べたからといわれ叱られたので、たくさんかけたという。
ノチノモノは、人に踏み付けられた方が良いという場合とそうでない場合がある。人に踏み付けられた方がよいというのは、頭が固くなるので良いとか、父親を怖がらせるのに良いといった理由であった。
踏まれない方が良いといわれるのは、踏まれては困るのでそのために敷居の下に埋めるのだという。どちらにしても、出入口の所に埋める訳だからノチノモノの上をその家の人や他人が通り、何時しかは、踏み固められてしまうが、出入り口の敷居に乗ってはいけないという戒めにもなる。
お産のとき使用したサンボロは、アキノカタの方角で洗濯をしてその場に穴を掘って埋め、日中はコモを掛けて日をかけないようにした。また、同様に出産した人の衣類は、洗濯してもお天道様の光に当ててはいけないとされ陰干をした。
ウブユ(産湯)は、先逹(神主、僧)にアキノカタを見てもらい、そこに捨てたり、流れのある所はいけないといつ
て、裏山(屋敷内の裏の方)に捨てたりもした。

<< 前のページに戻る