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第9章 年中行事

第2節 春から夏の行事

3 三月の行事

ハルキトウ
ハルキトウ(春祈禱)が、三月半ばごろ各地で行われる。そろそろ暖かくなる時期で、実際の農作業も始まる。また、病気もはやりだすころである。この時期にあわせて行う厄除け、豊作祈願の行事であろう。
荒井では、三月十五日世話人が須賀神社に集まって、神主が豊作祈願の祝詞をあげた。また、この日は神社で神楽があった。神楽師は、桶川市日出谷から来た。餅を食べると腹の虫下しになるといい、この日は仕事を休んで、餡入りの草餅をこしらえて食べた。親類にも配った。
北本宿では、三月二十五日に一年間無病息災で働けるようにと祈って悪魔追放の天神様の春祈禱が行われる。この日はまず、三里余り(約一三キロ)離れた玉敷神社(北埼玉郡騎西町騎西)にオシッサマを借りに行く。迎えにいく人は、夜明け方の三時に徒歩で神社を出発して、玉敷神社で祓いを受けオシッサマを借りて七時ごろ帰り、神社の拝殿西側に安置する。この時北本宿囃子連が迎えの囃子を打つ。
一般の氏子は、朝八時ごろ一戸一人以上神社に集合して、村回りの準備にかかる。
村回りの時、持参する品は以下のものである。
・大般若心経一巻(多聞寺より借用)
・お面、木刀、衣装(玉敷神社より借用してきたもの)
・大幣束、子供用玉串(天神社の宮司が作る)
・大幣束立て(氏子が藁で左回りに編んだ桟俵)
・オカモチ(出前用のさげ箱をうどん屋より借用)

十時ころ氏子全員が揃うと、道案内の区長代理を先頭に村回りに出発する。道案内はその年新仏の出た家など、訪問しない家を知らせる。
行列は次の順序で、天神社を出て北から南へ回る。
Ⅰ お祓いの神官
2 お祓い用の玉串持ち(主に子供が勤める)
3 悪魔祓い(玉敷神社から借りてきた面を付け、右手に木刀、左手に大般若経を持つ)
4 大幣束(二人で担ぐ)
5 御神体(奉持者が持つ)
6 オカモチ(お賽銭を各戸で貰うため)
7 太鼓(北本宿囃子連一同)

各戸では、家の中を土足で通り抜けられるように座敷にムシロ (筵)を敷き、奥の座敷には机を置き灯明とお賽銭を供えておく。村内の各家を次々に村回りして一人が祓い、一人がミタマを人々の頭上にかざして、お賽銭を受けた行列は、大幣束を村境の辻に納め、氏神様の天神社に帰還する。神官の送りの祝詞のあと、玉敷神社から借用してきた御神体は、送りの氏子に担がれ送りの太鼓で送られて玉敷神社へ向かう。受けたお賽銭は、ミタマとともにお櫃に納める。なお、送迎の責任者は中山道を境に東側、西側で一年交代で交互に勤めた。
全ての行事を終えると、氏子一同拝殿で直会(なおらい)をした。各戸では草餅をつき、親戚に配った。きなこをつけて食べた。
ただ、この行事も交通争情でミタマの送迎も自転車から車に変わり、村回りは止めてミタマを天神様に飾って、氏子が神社で参拝するように変わっている。
下石戸上では、、三月十五日が春祈禱で、天王様(八雲神社)と氷川神社の祭りが行われる。太鼓がたたかれ、神官が来て祭事が行われるので、皆お参りに行く。

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