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第9章 年中行事

第3節 盆

2 盆行事

仏様迎えと盆行事
十三日が迎え盆である。風呂に入って身を淸め、夕方家族揃って墓に仏様を迎えにいく。新しい浴衣をおろしたり、履物を新しくして迎えにいく家もあった。
荒井では早い家では、お昼を食べ終わると迎え盆に観音堂に行く。提灯とろうそくと線香を持って出かけ、墓に線香を上げて、提灯に灯をつけ「さあ、お迎えに参りました。乗ってください」といい、迎えてくる。「どうぞ、お入り下さい」といって縁先から入り、盆棚のお灯明にろうそくの灯を移し、「御苦労さまでした」とすぐに水を上げ、皆で代わる代わる線香を上げて、夕方には夕食を供える。一般には午後から迎え盆に行く事が多いが、新盆の家は朝早く迎えにいく。迎え火は焚かない。盆の期間中の供物と食事は家によって違うが、十三日は朝がボタモチ、昼うどん、夜は御飯で刻み昆布とトウナスの煮物を食べる。送り盆の十六日は、朝がボタモチで他に送り団子を作り昼がうどん、夜は小豆御飯である。
下石戸上では十三日の夕方五時ごろ提灯を持って墓に仏様を迎えにいく。墓で提灯に灯をつけ、線香を上げて「この中にお入りなさいまし」といって、提灯をすぼめて御先祖さんを乗せ連れてくる。縁側から上がって盆棚に提灯の灯を移す。この灯はなるべく消さないでおいて、この灯で線香をつけて上げる。帰ってくるとまずお茶とお菓子を盆棚に上げる。十三日の夜は、白い御飯と白茄子、カボチャ、昆布を甘辛く煮たもの、キュウリもみ、お茶を供える。ナスの切り方は決まっていて、まず縦に二つに切り、それを横に四つに切って、賽の目に刻む。十四日の朝はボタモチ、昼は手打ちうどん、夜は御飯を供える。十六日の朝までくり返す。お供え用の食器は小さい白い焼き物を十二ぐらい使う。お箸はオガラである。ほかの供え物は、カボチャ、サツマイモ、里芋、生姜などのその時期の作物でホオズキは必ず飾った。十五日は寺で施餓鬼があり、塔婆を作ってもらい、墓地にさす。盆飾りは、ナスの馬のほかに瓜で象を作って供えたりした。灯明の灯は、もとは食用油を使っていたが、今は石油や豆ランプで代用している。
宮内ではこんばん提灯を持って墓に迎えにいく。墓で提灯に灯をつけ迎えてくる。家の入り口に盆様の足のすすぎ水といって、ばけつやたらいに水を入れておき、こんばん提灯の下を少し濡らして三回回す。これで仏様が足を洗ったことになる。玄関から上がらず、廊下から上がって盆棚に火を移し、線香を上げる。迎える時、家の門口で藁を燃やす家がある。墓に迎えにいくのと、迎え火と両方やる家と、墓に行かずに迎え火だけで済ませる家がある。
古市場では十三日に盆棚を作り、提灯、線香、花を持って家中揃って寺にお盆様を迎えにいく。寺で提灯に灯を入れ、その灯を消さないように家に帰ってくる。家に入る時は縁から入る。提灯の灯を盆棚に移してお盆様を迎え、線香を上げる。墓地にある地蔵様などに三〇〇円か五〇〇円ぐらいのお賽銭を上げてくる。これは墓地の留守番の人のものになる。盆には寺で施餓鬼があり、塔婆を作ってもらう。普通の家では五〇〇〇円ほど包むが、新盆の家は五万とか七万包む。戒名によっても違う。盆中には親類が行き来し、八百円から二〇〇〇円ぐらいの生花を供えたりする。墓地にも米や花を供える。
北本宿では十三日に盆棚を作り、夕方五時ごろ揃って墓に迎えにいく。迎えてくるとすぐに、「長い旅で水が飲みたかろう」とお寺から貰っておいたひき茶を盆棚に供える。盆中の供え物は「朝はボタモチ、昼間はうどん、夜は米の飯、トウナス汁」と昔からいった。清水トラ家では、重箱の中に九つボタモチをいれて盆棚に供え、他にオルスイ様といって仏壇に二個供えた。
常光別所は菖蒲県道を境にして上と下に別れており、上の人は地蔵堂の共同墓地で先祖迎えのロウソクの灯をつける。下の人は大堂のあった石碑の建っている墓地に住職が灯明を立ててくれたので、その松明で迎え火をつける。

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