からから揺れき 鎮魂の歌碑
鎮魂の歌碑
柿すだれ
散歩路の無人販売ちちろ鳴く低き台より柿を購ふ
柿好む夫を思ひて購へる柿の重さの手に心地よき
山間の秩父の里の柿すだれ目に浮かびくる秋風立ちぬ
去年逝ける叔父の植ゑたる富有柿常のごとくに実は色づけり
柿膾(なます)作るに義母の味すると夫は大きく頷きつつ食む
朝霧の深き林を歩みゐて肌に触れくる冷気愛しむ
散歩路はひたすらの霧ただ白く犬を連れたる人紛れゆく
海の無き県に育ちて霧笛なる言葉の響きに憧れゐたり
耳遠き不便を夫に伝へつつテレビのボリューム今日も高くす
周囲みなどつと笑へど耳遠きわれは遅れて曖昧に笑む
埼玉県歌人会県知事賞
気掛りな用件二つ無事終へて冬日の庭に伸びひとつせり
足傷め二階に上がれぬ十日間家内(やぬち)に携帯大活躍す
通院の送迎時間を気遣ひて夫待ちくるる運転席に