北本市の埋蔵文化財

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宮岡氷川神社前遺跡発掘調査報告

早川智明 吉川国男 石井幸雄
岩井住男 土肥 孝

5.遺物

 土製品

土製耳飾
本遺跡の出土品のなかで最も注目されるのは、土製耳飾であろう。それは造形的にすぐれているばかりでなく、透彫りに見せる精巧な細工は装飾美的効果を明らかに意識して制作されており、工芸品としての価値が高い。出土点数は、残欠まで含めて24点で、それを実測したものが第19・20図である。形態的には、全部いわゆる滑車形に属するものであるが、さらに分類して説明しておこう。
a スタンプ形耳飾(第20図7)
この形は1点のみで胎土を臼形にかためて焼いたものであり、なんら工作はない。重さは103gをはかるので、果して耳朶にこんな重いものをはめこんで飾りとしたかどうか疑問である。ただ、周縁がややくびれ気味になっているところから、耳飾りの形態に近いということだけである。

第20図 土製品実測図 耳飾


b 有文臼形耳飾(第19図4・8)
4は直径2.O㎝あり、刻み目を周縁につけ、内側には女陰を形象化して彫っている。8は中心に孔を貫通させ、そのめぐりにひとまわりの沈線と8個の三叉文を配している。

第19図 土製耳飾実測図


C 輪形耳飾(第19図9~14、第20図1~6)
厳密にいえば本類が滑車形にもっともふさわしい形をしている。本類に属するものが一番多いが、完形品は1点もない。第19図14と第20図3とには、彫刻文が施されているが、他のものは無文である。内部の形態から、有段のものと無段のものとがある。胎土は精選されており、焼成も良好で、明褐色を塁している。また、全体によく研磨されている。胎土、焼成、形態がみなよく似ているので、同一胎土から同時に製作されたかのような感じを受ける。大きさは、外径5.0~8.0㎝で、11個の平均は7.05㎝であり、他の平均3.35㎝にくらべ2倍以上も大きい。彩色はない。

第19図 土製耳飾実測図

第20図 土製品実測図


d 透し彫りのある耳飾(第19図1~3、 5~7、図版25-3、図版26)
大きさは3~4㎝ほどの中型のものである。全体の形態から言えば輪形を呈するが、輸内に複雑、奇怪な彫刻と細工を施しているのが、より特徴的である。透し彫りの手法は、周縁および輪内に半肉彫りにより三角形の印刻を行なったり、太い沈線をまわし込み、その彫り残した部分に刻み目や列点を施すというものである。刻み目を施す細工については、臼形の手法と同様である。これらの全部には丹を多量に塗っている。
個別に説明をすると、 1・2は大きさこそ少し異なるが、全く同タイプである。周縁から輪内に4つの焔状の突起を出し、三角形の印刻を施し、そして周縁や彫り残した部分に刻み目をつけている。耳飾の断面形は、上下に縁取りをして、中央部が全面的にくぼみ、そして輪内への突起は中ほどからやや牙状に出ている。周縁の相対する位置に4つの台形のたかまりを形づくっている。
3も大体1・2と同手法であるが、輪内彫刻は図解的には1・2を発展、加飾したものであることがわかる。すなわち4つの突起を左右に2つずつ合体し、その両端に虹形のかけ橋をつなぎ、そして上下のかけ橋を中央のコムギ形の肉で連結している。
5も輪形であるが、輪内には、上から下へ、中央に孔をもった肉部でさしわたしをしている。このさしわたしの表面は太い沈線が刻まれている。色調は淡褐色を呈する。
6は、三叉状の腕木部を中にして、刻み目と沈線を施した輪部を形成している。軸部の中央には貫孔があり、その周囲に沈線を1周させ、それぞれの腕木部には点文と二条の沈線とが配されている。
7は輪内の装飾を欠損しているが、 3と6とを折衷した文様装飾をもっていたものと推察される。

第19図 土製耳飾実測図


e 臼形耳飾(図版25-4)
この形態は1点である。本きさは外径、1.6㎝、高さ1.0㎝ある中央孔をもった臼形をしているが、底面は平らであるので、表画の外周縁がつまみあがっている感じである。全体的に肉がうすく、出来ばえも拙劣である。

f カフスボタン形耳飾(図版25-1・2)
表面から見るとドーナツ型をしている。表面の輪部にわずかに高い瘤を4個もっている。側面から見るとカフスボタン型をしていて下方の直径が小さくなっている。

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