北本市の埋蔵文化財
北本市の遺跡と遺物
江川流域の遺跡群
江川は旧北本宿の西側を、北から南へ向かって流れる小流で、この小流の形成した支谷低地によって、高尾地区と荒井地区とを地形に分けている。その水源は鴻巣市原馬室の湧水にあり、流域の湧水や滲水を集めて、桶川市樋詰付近で荒川に合流している。もともとは、湧水の自然であったが、現在は用排水路の役目を果しており、上流の方では宮川とも呼ばれている。この江川が解析して形成した支谷は、幅300~500メートル、洪積台地面との比高は4~9メートルあり、谷断面は緩傾斜となっている。支谷は現在、ほとんど「ふかんぼ」とか「どぶっ田」といわれる湿田となっているが、開田前はおそらく、カヤ、ヨシ、アシ、マコモなど繁茂していたであろうことは、所々にのこる池沼からも肯けるところである。
この江川支谷も樹枝状に枝谷をひろげているが、これら江川水系の支谷流域に、所在が明らかとなった遺跡は総数21を数える。これらの遺跡は繩文、弥生、古墳、歴史の各時代の遺跡があり、下流の桶川市の遺跡の数を合わせると、50箇所にも達するほど多く所在している。
江川の水流中には、 ドジョウ、ウナギ、ナマズ、コイ、フナ、クチボソ、ハヤ、クキ、タナゴ、メダカなどの魚族が棲游していたが、これらの遺跡はこのような淡水魚族の捕獲に生活の基盤をおいて、立地した疑いがある。このことについては「高井遺跡」(註)の報告書のなかでも述べておいた。
(註)柳田敏司・吉川国男・下村克彦、桶川市教育委員会刊 昭和44年