北本の動植物誌 本編 北本市のチョウ類

自然2 >> 北本の動植物誌 >> 本編 >> 北本市のチョウ類

北本市のチョウ類
牧林功
1.はじめに
北本市は大宮台地の北端に位置し,開発されてきたとはいえ,今なお各地に雑木林を残している自然度の高い地域である.筆者は1990年5月以降,北本市の自然委託調査に従事してきた.これはその報告である.
北本市にはかつて農林省の農事試験場があった.河田黨氏はこの農事試験場の技師として勤務されていたことがある.そのとき採集した蝶4種の幼虫を飼育し,その幼虫形態と蛹形態を詳しく記載し発表した(河田黨[12,13]).北本市の蝶が発表された最初のことで,それはアカシジミ,ウラナミアカシジミ,ミズイロオナガシジミ,ミドリシジミの4種である.
その後久しく,この地域で蝶類の調査研究はなされていない.ようやく,1960年代に入って,当時県立浦和高校生徒であった巣瀬司氏が下石戸下に時折,採集に出かけた(碓井徹[35],巣瀬司[30])が,まとまった報告はなされていない.
1980年代に入って,日本野鳥の会埼玉県支部は北本市石戸宿を,バードサンクチュアリの候補地の一つとし,埼玉県の委託のもとに調査にとりかかった.その基礎調査報告書は1984年に発行された[22].このとき記録された蝶類は7科44種であり,注目すべきことはウラゴマダラシジミが記録されている.調査責任者は赤羽トモ子女史である.
この報告が出され,埼玉県が国の農事試験場跡地を中心にバードサンクチュアリ的な「自然学習公苑」化の構想をもっていることが明らかになったので,埼玉昆虫談話会は1985年,この地の調査を行った.この時の蝶類調査の責任者は山崎正則氏で多くの会員の協力のもと7科51種を記録した[38].
埼玉昆虫談話会の調査と平行して,碓井徹氏の指導のもとに県立上尾高校生物部の諸君が,蝶の発生消長の調査を行った[1].
その後も碓井徹氏の門下生達,特に佐藤憲二,斎藤章,島崎桂太,磯野治司,飯田香織,丸山裕史の諸氏が今まで未記録だった種を新しく発見したり,記録の少ない種の再確認などで活躍された.またそれとは別に北本市在住の小堀文彦,加藤靖治両氏,蕨市在住の中川利勝氏の活躍も記しておかなければならない.
この報告を書くにあたり,一言お礼の言葉を述べたい.まず故市川和夫氏に深甚の謝意を申し述べる.筆者をこの調査に誘うとともに,幾度となく現地に送迎していただき,そのつど有益なご教示をいただいた. 北本市史編さん室室長,三宮幸雄氏には調査にかかるあらゆる便宜をはかっていただいた.また碓井徹,磯野治司,小堀文彦の3氏には採集記録の提供をいただいた.また,萩原昇,巣瀬司両氏には文献の手配その他でお世話になった.また妻,和子には無理をいって,たびたび北本まで送迎してもらうとともに,調査補助の仕事をしてもらった.最後に炭谷八重子女史をはじめとする「北本の自然とふれあう会」の皆様には,いつも力づけていただいた.ここにご芳名をあげて感謝申し上げる.

<< 前のページに戻る