北本の動植物誌 本編 北本市の甲虫類

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北本市の甲虫類
牧林 功
1.まえがき
北本市の甲虫類について本格的に調査がなされたのは,埼玉昆虫談話会による石戸宿の共同調査で,1985年である.このとき故市川和夫,小林収,小堀文彦,竹内崇夫,築比地秀雄,氷室美芳各氏の協力も得て,阿部光典・笹井厚子両氏の共同研究として,翌1986年10月「寄せ蛾記」第48号に「北本市石戸宿の甲虫類」59科463種が発表された.僅か1年という短期間で,これだけの種類が記録されたことは,著者等の力量の素晴らしさによるもので,この報告も阿部光典,笹井厚子両氏の報告がなければ貧弱なもので終わったであろう.
阿部・笹井(1986)の報告より以前では,埼玉県教育委員会による全動物を対象とした大がかりな調査があり,その結果は「埼玉県動物誌」にまとめられた(1978)この動物誌で甲虫類を担当したのは斉藤良夫氏で,埼玉県産甲虫類90科1135種を明らかにしたが,この時の調査では北本市は主な調査地に入っていなかった.したがって動物誌のなかに記録された北本市の甲虫は僅か4科8種に過ぎず,そのうち2種は既発表の文献からの引用であるので,実際にこの調査で明らかになったのは,4科6種に過ぎない.したがって,阿部・笹井両氏の調査報告が北本市にとって重要であり,功績は非常に大きい.
その後,記野直人・長谷川洋両氏は2回にわたり「北本市石戸宿の甲虫類」を「寄せ蛾記」に発表.石戸宿から32科152種を記録した.小田博氏は4回にわたり「埼玉県産甲虫類の分布資料」を「寄せ蛾記」に発表している.この资料のなかに北本市から記録されたものが4科10種ある.野村周平・南部敏明両氏は「ツルグレン装置により取り出した小型甲虫類」を「寄せ蛾記」に報告したが,この中に北本市産アリヅカ厶シ科5種が含まれている.雛倉正人氏は「北本市で得られたゲンゴロウ類6種とその生息環境について」を「寄せ蛾記」に発表し,標題通りゲンゴロウ科6種とその生息環境を明らかにした.また碓井徹氏は「埼玉県内で採集された水生甲虫類の若干の記録」を「寄せ蛾記」に発表.ゲンゴロウ科5種,ミズスマシ科1種,ガムシ科3種を北本市から記録した.また牧林功は「埼玉県産ハナノミの記録」を「寄せ蛾記」に発表したが,そのなかに北本市産2科2種もふくまれている.特筆すべきことは,阿部・笹井によって記録されたチビシデムシ科の1種はその後,西川正明氏によって石戸宿産の標本をタイブとしてカントウコチビシデムシ(図3)の和名のもとに新種として記載発表されたことである.以上が北本市の甲虫について調査された経線である.
この報告は阿部・笹井(1986)を基礎に,記野直人・長谷川洋(1993a, b),野村周平・南部敏明(1993),小田博(1994a, b),碓井徹(1994),牧林功(1994)の記録を加えたものに,故市川和夫,磯野治司,内田正吾,碓井徹,小堀文彦,小堀貴文,南部敏明の各氏と筆者の採集した未発表の資料を使ってまとめたものである.種の同定には小田博,高桑正敏,平野幸彦氏らにお願いした.また埼玉県自然学習センター(所長・渡辺ヒロ子)からも貴重な情報の提供をいただいた.ここにお名前をあげた各氏のご教示や標本,情報のご提供に厚くお礼の言葉を申しあげるとともに,まとめあげることを督励された北本市史編さん室三宮幸雄室長をはじめとする市史編さん室の各位並びに,原稿の校閲をいただいた平野幸彦氏に深く感謝する.

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