北本の動植物誌 本編 北本市の鳥類

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北本市の鳥類
島田勉
1.はじめに
北本市は埼玉県の中央部よりやや東の荒川中流下部域の大宮台地上に位置する.かつては畑と水田・雑木・ 林が市域の広い面植を占める純農村地带であったが,都心から近いことから,1960年代からの都市化の波によって農耕地や雑木林は住宅地へと姿を変えていった.
北本市の鳥類に関しての文献として初見されるのは,明治45年(1912)刊行の「石戸村郷土誌」である. ここでは郷土に生息する鳥として野鳥44種,飼鳥等5種をあげている.しかし,日本の近代鳥学発達以前のものであり,専門家によって調査されたものでないので,いろいろ疑問な点があるのは残念であるが,本市の昔の鳥相を知る上で貴重な文献である(詳しくは後述する).その後70年間は本市の鳥類についてをまとめた報告はないが,近年になり,市内全域の鳥類についてをまとめた加藤俊一(1982)の「北本の野鳥」が ある.これは北本市教育委員会委託により‘79〜’81年にかけての調査によって記録した115種を報告したものである.市域の限られた地域についての鳥類調査報告では,石戸宿の旧農事試験場付近(石戸宿に隣接する荒川河川敷を含む)の埼玉県(1984)によるバードサンクチュアリ基礎調査により35科128種の報告がある.これは‘78年~'84年の調査記録を集積したものであり,その後,同地域は’84年〜’90年にいたる(財) 埼玉県野鳥の会の継続調査により,新たに12種が記録され,計37科140種カ噺画地の確認烏類となった.さらに,'90年~'91年の現地調査において1種が追加され,16目37科141種が石戸宿地区(自然観察公園予定地) の全記録種となった.この他,断片的なものとしては,(財)埼玉県野鳥の会(現,(財)埼玉県生態系保護協会)の機関誌「野鳥さいたま,ナチュラルアイ」や(財)日本野鳥の会埼玉県支部の機関誌「しらこばと」に,本市に関する観察記録や探鳥会記録としての報告が見られる.
筆者は’77年4月より本市に勤務となり,本市の鳥類について調査する機会を得て,これまでに,北中丸, 常光別所,花の木,宮内,石戸宿地区を中心に調査を続けてきた.この間,石戸宿地区は鳥相の豊かさから, 県のバードサンクチュアリ候補地となり,そして,その構想を発展させた,県設の自然観察公園候補地と決定し,この調査にも参加した.’90年4月~’93年3月までの3年間('93年12月まで継続調査)は北本市教育委員会自然委託調査員として,市内全域を調査してきた.特に石戸宿周辺(石戸宿,荒井,高尾,荒川河川敷),宮内中学校周辺については重点的に調査した.なお,石戸宿では2コース,宮内中学校付近では1コースのロードサイドセンサス(左右各25m幅のラインセンサス)を行い,個体群の月変化や年変化等を調査した.本報告では概略を述べるだけとし,詳細は別の機会に報告することにする.
本報文は,筆者の調査記録に,諸氏,諸団体の研究・観察報告を加え,さらに多くの情報(未報告)を取り入れて,まとめたものである.本報文では,昭和52年4月〜平成5年12月(1977年〜1993年)の間に記録された野鳥163種及び飼鳥の野生化等9種についてを本市の生息鳥として報告する.今後も調査を継続し, 環境変化と鳥相との対応についてを追及していきたい.
本報文を書くにあたり(財)埼玉県生態系保護協会事務局の堂本泰章氏,須永伊知郎氏,岩木晃三氏の各氏には,調査や報文をまとめるにあたり,たくさんのご教示をいただいた.北本の自然に親しむ会会員の小川寛次氏,中村よしひ氏,(財)埼玉県生態系保護協会会員の新井律子氏,家村弘子氏,大久保茂徳氏,埼玉県昆虫談話会会員の碓井徹氏,北本市役所職員の磯野治司氏には数多くの情報をいただき,この報文をま とめるにあたり大いに役立つことができた.また,東中学校や宮内中学校の生物部の生徒諸君にはよく調査に同行していただいた.埼玉県自然学習センターの職員及び自然学習指導員の諸氏には情報提供,資料紹介までたくさんの調査協力をいただいた.また,市史編さん室の三宮幸雄室長をはじめとする職員の皆様には, たえず情報をいただき,原稿の遅れがちな筆者に温かい励ましをいただいた.本報文がまとめられたのも多くの方々のご協力,ご教示のお陰である.皆様に深く感謝を申し上げる.
なお,北本産鳥類目録の中の観察者・採集者が筆者の場合はTSで示した.

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