第4章 社会生活と文化

第1節 社会生活

6　戦時下の生活

298　昭和十六年（一九四一）二月　石戸村生活改善申合規約
　　（旧石戸村文書）
　　　北足立郡石戸村生活改善申合規約
第一条　本規約ハ現下重大時局ニ鑑ミ断呼（乎）永年ニ亘ル冠婚葬祭等ノ虚栄的形式ヲ排シ、我国独特ノ家族制度ノ美風卜礼儀ヲ失セザル限り冗費節約ノ徹底的手段ヲ講ジ、以テ時弊ヲ一掃シ簡素ニシテ厳粛ナル冠婚葬祭等ノ普及徹底ヲ期スルヲ以テ目的トス
第二条　前条ノ目的ヲ達成スル為本村住民ハ深ク時局ヲ認識シ、一致協力・滅私奉公ノ精神ヲ以テ左記事項ノ実行ヲ誓約ス
　第一項　結婚ニ関スル事項
　　一、 婚約成立シタル時ハ双方合意ノ上極力簡素ニスル事ニ努メ、特ニ貰ヒ方ニテハ旧来•弊風ヲ一拋シ円満ニ本規約ノ実行ニ努ムル事
　　二、 調度及ビ衣類ハ出来得ル限り新調ヲ見合セ余裕アル場合ハ貯金又ハ国債等ヲ持参セシムルコト調度品ノ送り込ミ行列衣裳見セ等ハ全廃スルコ卜
　　三、 式服ハ団服又ハ制眼ヲ利用シ得ル場合ハ必ズ之ニヨリ、然ラザル場合ニモ簡素ナル一着ニ限り花嫁ハ留袖以下トシ、花婿ハナルベク平服ニ儀
　　　　　礼章トスルコト
　　　　　式後ノ色直シハ之ヲ廃スコト
　　　　　参列者ノ服装モ之ニ準ジ簡素ニスルコト
　　四、 結婚式ハ厳粛ヲ失ハザル程度ニ於テ簡略ニシ虚礼虚飾ヲ避クルコト
　　五、　結婚披露宴ハ簡素ヲ旨トシ、列席者ハ近親者及隣保班若クハ部落会内ノ範囲ニ止ムル事
　　六、　結婚式又ハ結婚披露宴ニ於ケル酒食ニ要スル費用ハ一人当り®高卜雖モ五円トシ、出来得ル限り低額ニテ間ニ合フ様工夫スルコト
　　七、　結婚祝ハ精神ヲ主トシ近親者以外八金品ヲ贈ラヌ事
　　　　　但シ隣保班又ハ部落会ニ於テ酒一升広紙若干ヲ限度トシ、贈ル事ハ差支ナキ事
　　八、　結婚ニ要スル費用ハ双方共年収入ノ三割以内タル事
　第二項　出生ノ宮詣り帯解キ節句、兵士入退営ノ慶祝ニ関スル事項
　　一、出産、宮参り節句ハ長男長女ニ限り簡素ナル祝ヲ為スハ差支ナキモ、二男二女以下 ハ内祝卜シ、総テ祝品ノ贈答ヲ全廃スル事
　　　　帯解キハ全廃スル事
　　二、兵士入営ノ際ハ伍人組若クハ隣保班又ハ部落会ニ於テ一戸一円以内ノ金品ヲ贈り、兵士ノ立振舞ノ肴ハ焼スルメ ・煮X程度ヲ限度トシ、祝酒ハ努メテ少覺ニ止メ出席者八伍人組若クハ隣保班内ノ者ノミトシ、部落会員其ノ他一般ノ歓送者ハ氏神又ハ適当ナル場所ニ於テ待合セ出発スル事
　　　　但シ部落会二於テ冷酒一升以内ヲ持参シ待合セ場所ニ於テ乾盃スルハ差支ナキ事
　　　　退営ノ際ハ直接駅二於テ歓迎シ氏神又ハ適当ナル場所ニ於テ解散スル事
　　　　但シ入退営ノ際共近親者ハ此ノ限リニ非ズ
　　三、兵士ノ帰郷土産ハ一切之ヲ受ケザル事
　第三項 普請及旅行年賀ニ関スル事項
　　一、普請ノ手伝ハ普請者ノ依頼ヲ待チ快諾スル事
　　二、上棟式ノ祝酒ハ三献ヲ限り楝梁送リノ古式ヲ廃スル事
　　三、神仏ノ参拝其他旅行ニ際シ餞別・留守見舞及土産物ノ贈答ヲナサザルコト
　　四、年賀ハ近親者ノミニテ出来得ル限り簡素ニ之ヲ行ヒ、可成酒ヲ用ヒズ茶菓ノ程度トスルコト
　第四　項葬儀ニ関スル事項
　　一、葬儀ハ厳粛ヲ旨トシ簡素ニシ虚礼虚飾ヲ避ケ特ニ左記事項ハ厳守スル事
　　１　死亡並ニ葬儀執行ノ通知八親戚及故人卜特ニ親交アリシ者ノ範囲ニ止メ其他八葬儀終了後ニ通知スル事
　　　　前記ノ通知ヲ受ケザルトキハ従来悔帳ニ記載アルト雖モ会葬又ハ見舞行キヲ遠慮スル事
　　　　但シ故人公職ニアリシ為其ノ関係者又ハ特ニ避ケ難キ関係アル者ノ会葬スル場合ハ、葬儀前予メ故人家庭又ハ隣保班長ニ届ケ出デ了解ヲ得タル後会葬スル事
　　２　通夜ノ酒食ハ全廃シ茶菓ノ程度ニ止メ時間ハ十時限りトス
　　３　香奠ハ近親者ノミトシ、隣保班若クハ部落会一同ニテ泉香若干ヲ贈リ金銭ノ寄贈ハ全廃スル事　
　　４　花輪・生花等ハ故人ノ家庭ニテ各々一対ヲ限度トシ、用意スルハ差支ナキモ他ヨリ寄贈スルハ全廃スル事
　　５　香奠返シハ全廃スル事
　　６　まき銭・ くれ銭等ハ絶対ニナサ々゛ルコト
　　７　膳部ハ一汁二菜トシ忌中払ノ酒ハ冷酒少量ニ止ムル事
　　８　手伝区域ハ伍人組又ハ隣保班内ニ止ムル事
　　９　喪中ノ総経費ハ年収入ノ一割以内タル事
　１０　忌日・年回・盆・彼岸等ノ祭祀ハ前各号ニ準ジ節約謹行スルコト

第三条　本規約ヲ実行スル為メ実行委員長ニ村長ヲ推挙シ各部落会長ヲ実行委員トシ実行ノ指揮ニ当ル各部落会ニ相談役若干名ヲ置ク相談役ハ隣保班長トシ実行ノ協議ニ参与ス
第四条　部落会員冠婚葬祭等執行ノ場合八予メ其ノ部落ノ実行委員卜協議スルコト、若シ分度ヲ超へ又八費用ヲ節約シタル場合ニハ相当金円ヲ本村小学校基本金又ハ設備費へ寄附スルコト
　　　　附則
本規約ハ昭和十六年二月一日ヨリ実行ス