実録まちづくりにかける集団
第2編 「わぁ、つくしんぼみたい、わたしのおうち」
あそびの学校が歩んだ十三年
隣町にあるホンダ航空は、セスナ機による遊覧飛行を実施している。
平成三年十一月二十三日、七〇人近い子供たちは、かわるがわるセスナ機に乗りこみ、空から自分の家を捜していた。はじめて、三〇〇メートルの上空から見た景色は、想像していたのとはずいぶん違っていた。
すぐ見つかると思っていた自分の家がわからない。小さすぎたのである。学校・病院・工場など、比較的わかりやすい建物を基準として、やっと捜した自分のうちは、「ツクシンボのように、かわいらしく小さかった」。
学校で習った地図には、道路に色がついていて、町境がすぐわかったのに、空から見たら、色がついていない。少ないと思っていた緑の木や、林があちこちに見える。日ごろの生活の中で、あんなに大きく感じていた自分のうちが、マッチ箱より小さいのだ。
飛行時間は、たった七分程度。初めてのフライト経験は、とてつもなく長い時間に感じる。セスナ機は、機長を含めて搭乗定員が四名。三機が交代で子供たちを乗せ、合計二十七回の飛行が終わったのは、約三時間後であった。
これは、埼玉県北本市が、民間に委嘱事業として実施した「青少年ふるさと学習・あそびの学校」の一こま。平成元年七月に、北本市は、青少年育成市民会議を発足させた。市民が主導し、市民の力で運営をする、画期的な試みである。平成二年、当時の文部省から委嘱された「青少年ふるさと学習事業」をきっかけとして、この年から、市単独事業でスタートした時の、最終プログラムである。
学校ではできないこと、家庭で教えられないことを中心に、体験に主軸をおいた、野外体験学習プログラムであった。指導者として協力をしてくれたのは、昔ガキ大将として活動していたメンバーたちである。これ以後、十三年が過ぎる現在も、続けている事業になっていていようとは、当時だれも予想しないことであった。