からから揺れき 蝉しぐれ
蝉しぐれ
高野の御廟
蠟の灯も香(かう)の煙もほのゆれて高野の御廟ひた鎮もれり
ほの暗き苅萱堂(かるかやだう)に『石童丸』読みくれし母のこゑ懐かしむ
新緑の高野の旅の家苞と友のすすむる胡麻豆腐買ふ
雲ゆける丘に巨石の古墳あり蘇我馬子の墓なるらしと
風光る明日香の里の石舞台ひるがへる袖の見ゆる心地す
いたぶれる風にまかするしなやかさ吾には無きと山吹見つむ
苔むせる幹に触れつつ遠き日の母との花見もこの辺りかと
やや伸びしふぢの花房むらさきの淡きを伝ひて雨光り垂る
蝉しぐれ
高野の御廟