北本の動植物誌 本編 北本市の水生昆虫類

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2.北本市の水生昆虫相について
北本市に生息する水生昆虫はカゲロウ目28種類,トンボ目8種類,カワゲラ目3種類,半翅目23種類,卜ビケラ目9種類,甲虫目32種類,双翅目11種類で合計7目114種類である。カゲロウ目28種類のうち,26種類が荒川に生息する。荒川の上・中流域に主に生活し,しかも,北本市の荒川に生息する種類は,ナミフタオカゲロウ,マエグロヒメフタオカゲロウ,ウエノヒラタカゲロウ,キイロヒラタカゲロウ,キブネタニガワカゲロウ,ヒメヒラタカゲロウ,コスタニアマダラカゲロウ,クロマダラカゲロウであり,これらのカゲロウは荒川における生息可能な最下流地点を北本としている。止水性のフタバカゲロウは神社の池,プールに広く分布し,個体数も多い。トンボ目の幼虫を8種類確認する。このうち,ダビドサナエとコオニヤンマは山地を流れる河川の砂礫底に生息するトンボである。幼虫と成虫が調査期間中に数回記録された。したがって,北本市の荒川付近でダビドサナエとコオニヤンマの幼虫と成虫の生活サイクルが行われている。オニヤンマは家庭排水の流れ込まない小川に多数生息する。カワゲラ目はフタトゲオナシカワゲラ,ヤマトアミメカワゲラモドキ,カミムラカワゲラの3種類を確認する。フタトゲオナシカワゲラは湧水の砂泥土や枯葉の間で生活する。埼玉県内のオナシカワゲラの分布は山地渓流に限られている。平野部の北本市に生息することは大変珍しいことである。本種の生息地は埼玉県内で北本市が唯一である。カミムラカワゲラは荒川の上流から下流まで広く分布し,個体数も多い。半翅目は23種類生息する。アメンボは,市内の河川,池,プール等に広く分布し,個体数も多い。エサキアメンボは希少な種で,蓮沼のような低地にある古い池沼のみ生息する。ヤスマツアメンボとハネナシアメンボは湧水から流れ出る小川に多く生息する。ミズカマキリは蓮沼やプール等に生息する。コバンムシは,体長12mmで,緑色のコバン型をした虫である。埼玉県内でも正確な記録はなく,北本市の蓮沼が埼玉県初記録である。トビケラ目9種類のうち,6種類が流水性のトビケラで荒川に生息する。オトヒメトビケラの1種は小川に生息する。セグロトビケラとアオヒゲナガトビケラの1種は蓮沼に生息する。甲虫目はゲンゴロウ科15種類,ミズスマシ科1種類,セスジガムシ科1種類,ガムシ科14種類,ハムシ科1種類の合計23種類である。ゲンゴロウ科のゴマダラチビゲンゴロウ,キベリクロヒメゲンゴロウ,サワダマメゲンゴロウ,ガムシ科のマルガ厶シは清流性のものである。ホンシュウオオシュウオオイチモンジシマゲンゴロウは熱帯系要素を持つ遺存種で,生物地理学,系統学的にも非常に貴重な種である。双翅目はホソカ科1種類,ガガンボ科5種類,ブユ科2種類,ユスリカ科2種類,ミズアブ科1種類の合計11種類である。ニッポンホソカは小川に生息し,埼玉県初記録の種類である。

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