北本の動植物誌 本編 北本市の鳥類
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2.埼玉県の自然環境と鳥類の概説
埼玉県は関東中西部にある内陸県であり,地形的には西部の秩父山地,中部の台地,丘陵地,東部の低地に大きく分けることができる.近年本県では都市化が進み,低地は住宅や工場等に,丘陵や台地,低山地にはゴルフ場造成等が行われ,これらの人的行為によって自然環境は著しく悪化している.このため鳥相への影響も大きいものがある.
埼玉県の鳥類についてを全県的にまとめたのは,小杉昭光(1978)が最初であり,258種を報告した.その後,観察者や研究者による観察報告が増え,307種(埼玉県生態系保護協会1993)がこれまでに記録された.埼玉県に隣接する内陸県とを比べると,群馬県261種(卯木達朗1973)栃木県262種(日本野鳥の会栃木県支部1982),山梨県224種(中村司1977)であり,近隣の内陸県の中では最も記録種が多い.
埼玉県での記録種を鳥の分布と自然環境との関係から垂直的に亜高山帯,山地帯,低山帯,丘陵・台地帯, 低地の5つの地带に区分した.その概要を次に述べる.
A 亜高山帯(標高1600m~2500m)
いわゆる奥秩父といわれる地域の山稜部分がこの地帯にあたる.植生的には,コメツガ,シラビソ,オオ シラビソ等の針葉樹を主体とし,ダケカンバ等の落葉広葉樹が混生する地域である.下部はコメツガが多く, 上部になるにつれて,シラビソやオオシラビソが多くなる.この地域では,コマドリ,ルリビタキ,ウグイス,メボソムシクイ,エゾムシクイ,キクイタダキ,サメビタキ,コガラ,ヒガラ,ゴジュウカラ,ビンズイ,ウソ,ホシガラス等が代表的な鳥である.最上部の稜線部には高山鳥といえるカヤクグリが繁殖する. 本県最高峰の三宝山(2483m)では夏季にイワヒバリの生息が確認されているので繁殖するものもあるようである.この地域は夏季には生息する鳥は多いが,冬季に生息する鳥はきわめて少なくなる.
B 山地帯(標高800m~1600m)
この地域は秩父山地の広い部分を占めている.稜線部はツガ,ミツバツツジ,サラサドウダン,山腹はブナースズタケ群集,沢沿いはカツラ,シオジ等の植生を示す,落葉広葉樹林帯を形成している.この地带では,ホトトギス,ツツドリ,ジュウイチ,アオバト,コガラ,ヒガラ,シジュウカラ,ヤマガラ,エナガ,ミソサザイ,オオルリ,キクイタダキ,センダイムシクイ,ウグイス,コルリ,キセキレイ,アカゲラ,カケス等が代表的な鳥である.この地域の上部では,キバシリ,コマドリ,メボソムシクイ,エゾムシクイ,ルリビタキ,サメビタキ,ゴジュウカラ,ウソ,ホシガラスのような亜高山帯を代表する鳥も生息する.近年,伐採や植林が進んだとはいえ,生息する鳥は多い.亜高山帯同様,夏季に生息する鳥が多いが,冬季は少ない.
C 低山帯(標高200m~800m)
秩父山地の山麓部や上武山地,奥武蔵や外秩父と呼ばれる山々がこの地帯にあたる.植生的には,アカマツ,ヤマツツジ群落,コナラ,リョウブ等の落葉広葉樹を主とするが,ヒノキやスギの植林が広い面積を占めている.近年,この地帯にも開発の手がのび,ゴルフ場等に姿を変えた所も多い.このため野生生物への影響も大きく,鳥相も年々悪化している.この地带では,シジュウカラ,ヒガラ,ウグイス,ヤブサメ,メジロ,キセキレイ,セグロセキレイ,ヒヨドリ,ホオジロ,カケス等が代表的であり,集落のある所では, キジバト,ヒヨドリ,ムクドリ,スズメ,ハシブトガラス等の人里や農耕地を代表する鳥が多くなる.
D 丘陵・台地(標高50 m~200 m)
丘陵としては,比企,狭山,児玉,加治,高麗丘陵等があり,台地としては,江南,武蔵野,入間,大宮 台地等がある.北本市の大部分はこの大宮台地上に位置するが,大宮台地は標高的には低地帯クラスである.
この地帯の植生は,元来はシイ,カシ類,シロダモ等の暖帯林であるが,人的影響が大きく,クヌギ,コナラ,シデ類,アカマツ,リョウブ,ヒサカキ等を代表とするいわゆる雑木林を形成する.人里や農耕地の鳥や低山帯下部の鳥と共通種が多い.スズメ,シジュウカラ,メジロ,ヒヨドリ,ツバメ,ムクドリ,キジバト,モズ,エナガ,コジュケイ,オナガ,ハシブトガラスが代表種であり,近年,コゲラの進出が目立つ. この地带は開発がはげしく,宅地化やゴルフ場造成等によって自然環境の変貌が著しい.このため,この地域を代表する鳥ともいえるハチクマ,サシバ,サンコウチョウ,トラッグミ等の繁殖が激減している.
E 低地(標高50m以下)
利根川,荒川,中川,江戸川等の流域の県北部から東部に広がる沖積低地をいう.かつては水田や湿地が 広がる地带であったが,近年,都市化が進み,住宅や工場の造成によって大きくその面積を縮少し,自然環境の悪化が最も著しい地域である.この地域には人とのかかわり合いの強い鳥が多く生息する.人里や農耕地の鳥として,ヒヨドリ,ツバメ,モズ,キジバト,カワラヒワ,ムクドリ,ヒバリ,ハクセキレイ,ハシボソガラス,ハシブトガラスが多く,河川沿いでは,カルガモ,オオヨシキリ,セッカ,セグロセキレイ, ハクセキレイ,シギ・チドリ類,サギ類等が主である.この地域は冬季には,ツグミ,カシラダカ,カモ類等の冬鳥が多数渡来し,秋冬の渡り期にも多くの旅鳥が通過する.特に,荒川や利根川の中下流の河川敷は この地域としては自然度が高く,多くの鳥が生息し,場所によっては年間200種類前後の種類が観察される. 調査されている地域も多く,また,普段人目に触れる率が高いので,自然環境が悪い割には多くの種類が生息している.
埼玉県は関東中西部にある内陸県であり,地形的には西部の秩父山地,中部の台地,丘陵地,東部の低地に大きく分けることができる.近年本県では都市化が進み,低地は住宅や工場等に,丘陵や台地,低山地にはゴルフ場造成等が行われ,これらの人的行為によって自然環境は著しく悪化している.このため鳥相への影響も大きいものがある.
埼玉県の鳥類についてを全県的にまとめたのは,小杉昭光(1978)が最初であり,258種を報告した.その後,観察者や研究者による観察報告が増え,307種(埼玉県生態系保護協会1993)がこれまでに記録された.埼玉県に隣接する内陸県とを比べると,群馬県261種(卯木達朗1973)栃木県262種(日本野鳥の会栃木県支部1982),山梨県224種(中村司1977)であり,近隣の内陸県の中では最も記録種が多い.
埼玉県での記録種を鳥の分布と自然環境との関係から垂直的に亜高山帯,山地帯,低山帯,丘陵・台地帯, 低地の5つの地带に区分した.その概要を次に述べる.
A 亜高山帯(標高1600m~2500m)
いわゆる奥秩父といわれる地域の山稜部分がこの地帯にあたる.植生的には,コメツガ,シラビソ,オオ シラビソ等の針葉樹を主体とし,ダケカンバ等の落葉広葉樹が混生する地域である.下部はコメツガが多く, 上部になるにつれて,シラビソやオオシラビソが多くなる.この地域では,コマドリ,ルリビタキ,ウグイス,メボソムシクイ,エゾムシクイ,キクイタダキ,サメビタキ,コガラ,ヒガラ,ゴジュウカラ,ビンズイ,ウソ,ホシガラス等が代表的な鳥である.最上部の稜線部には高山鳥といえるカヤクグリが繁殖する. 本県最高峰の三宝山(2483m)では夏季にイワヒバリの生息が確認されているので繁殖するものもあるようである.この地域は夏季には生息する鳥は多いが,冬季に生息する鳥はきわめて少なくなる.
B 山地帯(標高800m~1600m)
この地域は秩父山地の広い部分を占めている.稜線部はツガ,ミツバツツジ,サラサドウダン,山腹はブナースズタケ群集,沢沿いはカツラ,シオジ等の植生を示す,落葉広葉樹林帯を形成している.この地带では,ホトトギス,ツツドリ,ジュウイチ,アオバト,コガラ,ヒガラ,シジュウカラ,ヤマガラ,エナガ,ミソサザイ,オオルリ,キクイタダキ,センダイムシクイ,ウグイス,コルリ,キセキレイ,アカゲラ,カケス等が代表的な鳥である.この地域の上部では,キバシリ,コマドリ,メボソムシクイ,エゾムシクイ,ルリビタキ,サメビタキ,ゴジュウカラ,ウソ,ホシガラスのような亜高山帯を代表する鳥も生息する.近年,伐採や植林が進んだとはいえ,生息する鳥は多い.亜高山帯同様,夏季に生息する鳥が多いが,冬季は少ない.
C 低山帯(標高200m~800m)
秩父山地の山麓部や上武山地,奥武蔵や外秩父と呼ばれる山々がこの地帯にあたる.植生的には,アカマツ,ヤマツツジ群落,コナラ,リョウブ等の落葉広葉樹を主とするが,ヒノキやスギの植林が広い面積を占めている.近年,この地帯にも開発の手がのび,ゴルフ場等に姿を変えた所も多い.このため野生生物への影響も大きく,鳥相も年々悪化している.この地带では,シジュウカラ,ヒガラ,ウグイス,ヤブサメ,メジロ,キセキレイ,セグロセキレイ,ヒヨドリ,ホオジロ,カケス等が代表的であり,集落のある所では, キジバト,ヒヨドリ,ムクドリ,スズメ,ハシブトガラス等の人里や農耕地を代表する鳥が多くなる.
D 丘陵・台地(標高50 m~200 m)
丘陵としては,比企,狭山,児玉,加治,高麗丘陵等があり,台地としては,江南,武蔵野,入間,大宮 台地等がある.北本市の大部分はこの大宮台地上に位置するが,大宮台地は標高的には低地帯クラスである.
この地帯の植生は,元来はシイ,カシ類,シロダモ等の暖帯林であるが,人的影響が大きく,クヌギ,コナラ,シデ類,アカマツ,リョウブ,ヒサカキ等を代表とするいわゆる雑木林を形成する.人里や農耕地の鳥や低山帯下部の鳥と共通種が多い.スズメ,シジュウカラ,メジロ,ヒヨドリ,ツバメ,ムクドリ,キジバト,モズ,エナガ,コジュケイ,オナガ,ハシブトガラスが代表種であり,近年,コゲラの進出が目立つ. この地带は開発がはげしく,宅地化やゴルフ場造成等によって自然環境の変貌が著しい.このため,この地域を代表する鳥ともいえるハチクマ,サシバ,サンコウチョウ,トラッグミ等の繁殖が激減している.
E 低地(標高50m以下)
利根川,荒川,中川,江戸川等の流域の県北部から東部に広がる沖積低地をいう.かつては水田や湿地が 広がる地带であったが,近年,都市化が進み,住宅や工場の造成によって大きくその面積を縮少し,自然環境の悪化が最も著しい地域である.この地域には人とのかかわり合いの強い鳥が多く生息する.人里や農耕地の鳥として,ヒヨドリ,ツバメ,モズ,キジバト,カワラヒワ,ムクドリ,ヒバリ,ハクセキレイ,ハシボソガラス,ハシブトガラスが多く,河川沿いでは,カルガモ,オオヨシキリ,セッカ,セグロセキレイ, ハクセキレイ,シギ・チドリ類,サギ類等が主である.この地域は冬季には,ツグミ,カシラダカ,カモ類等の冬鳥が多数渡来し,秋冬の渡り期にも多くの旅鳥が通過する.特に,荒川や利根川の中下流の河川敷は この地域としては自然度が高く,多くの鳥が生息し,場所によっては年間200種類前後の種類が観察される. 調査されている地域も多く,また,普段人目に触れる率が高いので,自然環境が悪い割には多くの種類が生息している.