北本のむかしといま Ⅵ 首都近郊圏として
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Ⅵ首都近郊圏として
3 変わりゆく伝統と受け継がれる芸能
年中行事ここに紹介する「年中行事」から「子どもの遊び」までの五つの項目は、「民俗」に関するものである。民俗とは、あまり聞きなれない言葉かもしれない。簡単にいえば、長い時間をかけて人びとの暮らしのなかから生まれてきた風俗(ふうぞく)や慣習(かんしゅう)、そしてそれに使ったくらしの道具などのことをいう。だから「北本の民俗を知る」といえば、「北本に住む人たちのむかしから今にいたる風俗や慣習を調査して、その生活の移り変わりを知る」ということである。風俗や慣習は、時代や地域によつてさまざまであり、それが変化しながら現在に受け継がれている。なかには変化しすぎて、今では意味が分からなくなってしまっているものも多い。それは、いつか、だれからも忘れられて、消えてしまうかもしれない。そうならないためにもむかしから北本で受け継がれてきた風俗や慣習を、わたしたちはしっかりと理解し、また次の世代へと伝えていきたいものである。
なお、民俗に関する事柄はたいへん多いため、ここで紹介するのはほんの一部である。興味があって、もっとたくさんのことを知りたい人は、「北本市史 民俗編』を手にするといいだろう。
さて、年中行事とは、毎年暦(こよみ)のうえで同じ日がくると、同じようにくり返される伝統的な行事のことをいい、それぞれの地域の人びとの生産活動と深い関係をもつものが多い。一年間の生活の折り目折り目にあたって、作物が豊かにみのることを祈ったり、豊作を神に感謝したりするための日といってもいいだろう。
年中行事は暦(こよみ)に従って行われるが、ここでややこしいのは、明治五年(一八七二)以前と六年以降では、暦がまったく変わってしまったことである。古い暦を旧暦(きゅうれき)、新しい暦を新暦(しんれき)という。旧暦と新暦では、一か月くらい日にちがずれてしまうことがある。さらに行事の日を一か月遅らせる月遅れもあるのでますますややこしくなる。同じ盆でも、普通の盆と月遅れと旧盆と三つあるのはこのためである。農作業の季節ごとの手順によく合っているのは旧暦である。だから、農村では今でも旧暦に近い月おくれで年中行事を行うことがあるのだ。
では、代表的な年中行事を見てみよう。