北本市史 資料編 古代・中世

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第3章 城館跡・金石資料・仏像

第3節 仏像

(二)北本の中世仏
正確な数字は明らかでないが、市内に現存する仏像はおよそ一五〇軀ほどと推定される。このうち中世にさかのぼる仏像はごく限られており、およそー〇軀前後が鎌倉あるいは室町時代の製作にかかるものと判断される。
鎌倉時代の作品としては、石戸宿東光寺の銅造阿弥陀如来坐像と深井寿命院の銅造地蔵菩薩立像があげられる。両像とも像高一〇センチに満たない小像で、もともとは個人的な念持仏として礼拝されていた可能性が考えられ移動性が高いため、当初から現在地に伝来したものかどうかは明らかでないが、いずれも鎌倉時代後半頃の一般的な時代様式を表していて興味深い。市内に現存する仏像としてはもっとも古手の作品として貴重といえよう。
室町時代にはいると、さすがに造仏件数は増加の傾向を示す。深井寿命院の木造阿弥陀如来立像、同じく深井薬師堂の木造薬師三尊像、下石戸下旧修福寺地蔵堂の木造地蔵菩薩半跏像、旧双徳寺観音堂の木造千手観音坐像、高尾観音堂の銅造十一面観音懸仏、下石戸下大蔵寺の木造阿弥陀如来立像等は、いずれもその様式・技法から見て当代の標準的な作例とみなされる。なかでも深井の寿命院像および同薬師堂像は形制相整った写実的な作風に共通したところがあり、室町時代後半頃の慶派の流れを汲む同一もしくは同系統の仏師の作品として注目すべきものがある。また、下石戸下の旧双徳寺観音堂像も、これによく似た作風を示す作品が北足立から埼葛地方にかけて数例存在していることが確認されており、室町時代後半期における地方造仏活動の実態を探るうえで見落とせない存在となっている。以下、これらの像を個別に解説してみよう。

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